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コードネームはBoo! (10)
林原力志

「未練タラタラってとこか?」

 カズキが携帯をいじりながら楽しそうな顔をしている。
 カードケースをじっと見ながら溜息でもついていたらしい。

「そ、そりゃな。せっかく採用してくれたのは事実だし」
「まあ、なかなかないわな」
「だろ? でも、もういいんだ。俺もアヤシイって思ったし、お前に相談して良かったよ」
「H.S.K.か・・・」
「何か分かったのか?」
「いや・・・」

 携帯と俺を交互にちらちら見ながらカズキが口ごもった。
 商社マンは忙しいって聞くしな。
 忙しいんだろう。

 再び、のんびりフリータイムだ。

 ふと気づけば、隣の席に年配の男性が座っていた。
 落ち着いた感じの、いかにも悠々自適で涼しい店に本を読みにきましたって感じだった。
 ぶ厚い本に顔を寄せて、熱心に読んでいる。
 たまに目をしぱしぱと瞬きしては、飲み物に手を伸ばしていた。

「ああ、そうか」

 気が付いた。
 店内はけっこう薄暗くしてあって雰囲気重視の店だからな。

「マスター!」

 席からカウンターの向こうにいるマスターに声をかけると、「ん?」ってな具合で視線を合わせてきた。
 あまりデカイ声を出してもな・・・。

 手でジャンケンのチョキを作って、俺は自分の両目の下に当てた。
 次いで、天井のライトを指さす。

「?」

 マスターがきょとんとしている。
 向かいに座っているカズキも、マスターを呼んだ声に気付いた老紳士も何事かと俺を見ていたが、構わず、親指で隣の席を指し示した。

「ああ!」

 マスターが破顔して、O.K.のサインを送ってくる。
 壁の照明コントロールを操作して、隣の席の照明だけが少し明るくなった。

「おお・・・」

 老紳士が微笑んで会釈してくれた。
 ちょっと恥ずかしくなったので、お辞儀してジェラルミン・カードケースについてもいない曇りを子細に点検するフリをした。

「たまに思うんだけど・・・」
「ん?」
「タケの観察眼といい、突然、見せるジェスチュアといいアレだな」
「・・・なんだよ」
「いやまあ、いいんだけどな」
「何だよ、言えよ」
「ドカチン出身とは思えないな」

 カズキがケラケラ笑った。
 この野郎・・・。
 長い脚を組んで、爽やかに笑って、「キザなドカチンに乾杯」なんて言いながら優雅にグラスを上げやがって。
 男の俺が見てもサマになってるんだから、さぞや・・・。
 店内を見渡すと、遠くのソファ席に陣取ってる女性陣と目が合った。

(仕事帰りのOLさんか?)

 顔を見合わせてはキャイキャイ盛り上がり出した。
 いつものことだ。
 カズキの乾杯は実に絵になるからな。

 どうだ、羨ましいだろう。
 イケメン商社マンとツーショットなんだぜい!
 へへーん。

「はぁ・・・」

 どんだけモテるんだろうコイツは。
 同じ生物とは思えないです、神様。
 もし、これがゲームかなんかだったら、即刻、キャラメイクし直して下さい、神様。
 あらゆるスキルはレベル1で、ゴールドもまったく貯まってません、神様。
 育てなおすのは簡単ですよ。

「はぁぁぁぁぁぁ・・・」

 あ。
 思いっきり溜息をついてしまった。
 慌てて店内に目を走らすと、カズキも、お隣の老紳士も、マスターも、例の女性陣もこちらを見ているような気がした。

 や、やめろ。
 そんな穏やかな視線を向けるなぁぁぁ。
 イケメンと一緒でしょぼくれてなんかいない!
 ほんとだぞ!
 俺だって手足の数や顔面のオプション数はカズキと一緒なんだ!(あんたらとも一緒だが)
 商社じゃないが仕事だって・・・。

 そっか、仕事・・・ないんだった。


<Prrrrr! You've a Call!>


 思いっきり両手両膝をついてしょげてる気分というか、アルファベットで「orz」って気分な俺の手元で涼しい声が鳴り響いた。
 データパッドが着信を告げていた。


(11)に続く

2010/10/03 初版

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