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コードネームはBoo! (11)
林原力志

 声が出たのは1度だけで、あとはずっとバイブレーションが続いている。
 よく出来ていると感心したが、PDAや電子手帳に近い性質の為か、通話に関しては電話というよりも無線に近い。
 スピーカーから相手の声が聞こえてしまうので、耳栓よりも小型のヘッドセットなるものを付けないといけないのだ。

「ヘッドセットを付けて・・・蒼い歯のアイコンを押す・・・よし」

 これでデータパッドから音が出なくなり、ヘッドセットから音声が出るはず。
 通話アイコンを押した。

<僕だ。細田だよ>

 うまくいった。
 これ、聞くのは耳栓もどきで良いとして、しゃべるのはどうすればいいんだ?
 マイクはパッドに付いてるのか?
 良く分からないので、とりあえずデータパッドを正面に持って話してみる。

「もしもし?」

<いいね、感度良好だ。さぁ仕事だよ。周りに民間人はいるかい?>

 民間人って・・・。
 普通の言い方じゃない。
 誰かいるか? とか人はいるか? とか、普通はそうやって聞くもんだろうに。
 ますますアヤシイじゃないか。

「喫茶店の中だからたくさんいます」

<O.K. それじゃちょっと人気のない所に移動できるかな>

「5分後にかけ直してもらえますか?」

<いやいや、それなら慣れてもらうのも兼ねて、ヘッドセットを付けたまま自然に振舞ってよ。僕からはわざといろいろ言うから>

「わ、分かりました」

<いいかい、通話はもう切れたように見せるんだよ? 僕との通信が繋がってるって誰にも思わせない練習だからね>

 まるでスパイ映画だな。

「はあはあ、なるほど。では後ほど。かけ直します。はい、では」

<うまいうまい>

 冗談じゃない。
 何も悪い事なんかしてないのに手が震えてきた。
 笑い出しそうだ。
 面白くもないのに。

<鷹城くん、笑っちゃだめだよ。今、笑いそうになってるよね? それは脳が事実と違うことを言ったりやったりすることに対して、誰に言うわけでもなく言い訳しようとしてるんだ。そうやって正当化しないと人は罪悪感に押し潰されるのかもしれないね>

 なるほどね。
 確かに小さい頃はよく嘘を見破られたもんだ。
 どうしても笑っちまう。
 大人になってずいぶんとツラの皮が厚くなったものの、嘘がデカイから正当化衝動もデカイってことなんだろう。
 そんな事を考えながらデータパッドをポケットに放り込んだ。

「お、さっそく呼び出しか?」

 残り一杯で帰ろうと言ってたこともあり、テーブルに置いたものを仕舞い始めるとカズキが携帯から目を上げた。

「そうなんだよ」

<喫茶店で何を飲んでたか、さりげなく言ってみて>

 また難しいことを・・・。

「いやぁ、ここのエスプレッソは最高だからもうちょっと飲んでいたいんだけどな」

<なるほどね・・・GPS情報で君の位置を割り出したよ。・・・えーとその店のサイトは・・・あったあった。オっサレ〜なカフェバーじゃないか。僕には完全なアウェイだぬ>

 妙な言葉遣いだ。
 わざとかく乱させようって魂胆か?
 その方が練習になるんだろうが・・・。
 ってか俺のいる場所は筒抜けなのか、本当に大した機能だよ。

「電車もないし、タクシーでの移動になるんじゃないか? たいへんな仕事に就いてるんだねぇ」
「あ、ああ。まあな」

 何かを素早く打ちこんだカズキが携帯の画面をこちらに見せてきた。
 視線で「見ろ」と言ってるようだが、実際に口に出した言葉はのんびりしたものだったので、画面を観て驚いた。

『まだ通信が繋がってるんだろ? 相手が話した時に目だけ左を見るのやめた方がいい。左耳に何か入れてますってバレバレだぜ』

 ・・・カズキはスパイごっこでも上手か。


(12)に続く

2011/02/10 初版

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