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Doll Master 第5話
飯場正臣

 美沙は自分の痴態に泣きそうになりながらも足早に家路を急いだ。
 完全に相手のペースに乗せられてしまった。
 体の弱点と本能を悪用した卑怯な男の手に乗ってしまったことが悲しかった。
 本当の自分ではなかったと必死に自分に言い聞かせる。
 あれは麻薬のようなものだ。
 言うなれば媚薬を嗅がされて理性がおかしくなっただけ。
 だから気持ちよさを求めてしまっただけなのだと、自分に言い続けた。

 自分の家が近づいてくると少しだけ安心した。
 完全な安全地帯だ。
 冷静になった美沙はゆっくりとした歩調になって、落ち着きを取り戻しつつあった。

 あたりは相変わらず暗く、長い間隔で置かれている街灯が道を明るく照らしていなくても、自分の家が近いというだけで安心できた。

 その時、携帯電話が鳴った。
 着信音からメールだとわかった。
 知らないメールアドレスだったが、あの男のだろうと直感し途端に嫌気がさした。
 アドレスは電話番号のままなので、おそらくプリペイド式の電話なのだろう。
 用意周到な男だ。
 もう少しで家だということもあり、美沙はメールを開いてみた。

 もちろん、携帯の画面を見る前に周囲をよくたしかめた。
 人は誰もいない。
 もともと人通りの多い道ではなかったが、今日の「秘策」が失敗したのは、もとはといえば歩きながら携帯をいじっていたからということもあり、確認せずにはいられなかったのだ。

「美沙、お前は最高の女だ」
「これまでで一番揉みがいのあるおっぱいだったぜ」
「お前のキスは最高だ。どんな男でもめろめろにするだろう」
「美沙の体臭は香水よりもたまらねえ」
「甘露のような唾液がもっと飲みたい」

 立て続けに5通も来たメールは、どれも下品なもので、まるっきり変態そのものという感じであった。
 会社帰りにしか襲われない。
 今日はもう襲われた。
 あとは帰るだけ。
 そんな感じがして、美沙は余裕を持って読むことができた。

 さっきまでは取り乱してこわがっていたが、今日はそれなりに興奮したこともあって、そのうち思い出しながら自慰でもできるようになれば自分も大したものだ。
 そんなことが考えられるくらい、美沙は落ち着きを取り戻していた。

 緊張から解き放たれたこともあって、美沙は少しおかしくなった。
 笑い出したいような気分だった。
 また着信音が鳴って、メールが届いた。

 今度はどんな間抜けなメールをくれるのかしら?

 美沙は面白がってすぐにメールを開いた。

「先走り液でパンツが濡れちまったよ。美沙ほどじゃないが」

 こちらが冷静だとHな内容のメールは笑える。
 せいぜい、帰ってオナニーでもしてなさいよ。
 明日こそは帰宅路を変えるんだから。
 美沙は心の中であの男に言い放った。
 せいせいした。


第6話に続く

2010/07/22 初版
2010/09/08 『ノクターンノベルズ』に転載

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