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Doll Master 第6話
飯場正臣

 家に着くと玄関先で立ち止まって、鍵を出そうとバッグに手を入れた。
 なかなか出てこない。

「鍵はこれかな?」

 低い声が後ろからした。
 はっとして振り返ると、上下が黒い服で、目出し帽の上からサングラスをかけている妙な男が、鍵をひらひらさせて立っていた。
 驚いて声も出なかった。

「おっぱいをなめてるときに抜き取っておいたんだ」

 美沙は突然のことに頭が混乱して、なんでサングラスをかけていて夜道が見えるんだろうなどと考えていた。
 よく見ると虹色に光っている。
 こちらから見えないだけで、向こうは暗くもならずに普通に見える偏光グラスなのだろう。

「まだ帰宅時間じゃない。ついて来い・・・」

 美沙は呆然としながら、男に手を引かれた。
 思考がまとまらず、おとなしく手を引かれて男の後ろを歩いていく。
 玄関を出てすぐ近くの道を曲がるとそこには黒いRV車が止まっていた。
 男に促されるまま助手席に乗る。
 逃げ出して警察に駆け込むことも考えたが、走って逃げたところで自分の足では追いつかれてしまうだろう。
 それになぜか鍵を取り返さなければ帰れないと思った。

 よく考えれば、警察に保護してもらったあとで、合鍵で入り、その後、玄関の鍵を取り替えてしまえばよかったのだが、この時の美沙には思いつかなかった。
 車を発進させた男はタバコをくわえて火をつけた。
 そういえば、公園でキスされたときも、昨日、抱きつかれたときもタバコの匂いがしていた。

「住所は知ってると言ったろう? だいたいお前、あれだけ挑発的なキスを自分からしておいて、そのまま帰れると思ったのか?」
「わ、わたしは・・・」

 キスなんかしてない、されただけ。
 そう言おうとしたが、男にさえぎられた。

「俺がなにもしなくなっても、顔中にずいぶんキスされたぜ・・・。一発ヌカなきゃ眠れねえくらい興奮させられたじゃねえか」

 どことなく男の口調は楽しそうだった。
 美沙は悔しくなった。
 そうさせたのはこの男なのに・・・。

 ただでも人気のない町を走りぬけ、車は山道へと入っていく。
 男は車のライトをハイビームにして、真っ暗な未舗装道路を走らせた。

「お前のブログの読者はみんな、お前のご主人様になりたがってんだ。いつかめちゃくちゃに犯してやることが願望さ」

 男は美沙の返事も待たずに話し続ける。

「ブログ読者のネットワークを作って、お前を持ち回りでM奴隷に調教するなんてどうだ?」
「・・・」
「なかなかいいアイデアだと思ったんだが・・・」

 山道に入るとすぐに大きくふくらんだエスケープゾーンがあり、車はそこで停まった。
 男は何も言わずにエンジンを切って、ぼんやりとタバコを吹かしている。
 ライトを消すと、鼻をつままれてもわからないほど暗い山道に、美沙はたまらなく不安になった。

「お前、自分じゃ気が付いてないだろうが・・・すげぇフェロモンだぜ。男を狂わすな、確実に。それがブログに出てんだよ」
「・・・カギを返して下さい」
「だめだ。ブログ読者にサービスするまではな」

 美沙には男が何を言っているのかわからなかった。

「ここでさっきみたいに、恋人同士ばりに仲良くしてぇんだがな。ま、無理だろな」

 あたり前の話だった。
 だが、男が美沙とのキスをやたらと気に入ったのは確かなようだった。
 美沙にとっては迷惑な話でしかなかった。
 仮にOKだとしても、こんな銀行強盗みたいな目出し帽を顔にすっぽり被っている男にどうやってキスするというのだ。

「何も見えないくらいだなぁ・・・」

 男はまた呟いた。
 気味が悪い。
 男はゆっくりと美沙の方を向いた。
 銀行強盗がサングラスをしているようにしか見えない。
 美沙は相手が何を考えているかわからず、人間ではないその顔に気持ちが悪くなって、顔を背けた。
 とたんに右手を握られ、ガチャッと音がした。
 手首に手錠がかけられたのだ。

「あっ」

 美沙がショックを受けている間にも、手錠の反対側はハンドルにかけられた。

「こんな場所で逃げ出すバカじゃないと信じている」

 信じているなら、なぜ、こんなことをするのか?
 美沙はそう思ったが何も言わなかった。
 男の行動に無駄がないことは今までイヤというほど思い知らされてきたからだ。
 どうせ、なすがままにされる。
 せめて、気に入らない犯され方だけはされるもんかと気丈に思った。


第7話に続く

2010/07/24 初版
2010/09/15 『ノクターンノベルズ』に転載

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