2010-2016 (C) e+- - All Rights Reserved.2010-2016 (C) e+- - All Rights Reserved.

Menu / Menu (Frame On)

Doll Master2 〜2人目〜 第1話
飯場正臣

 東京在住、契約社員の男性が飛び降り自殺。
 外傷等はなく、ワーキングプアを悲観した自殺と見られている。
 家賃の滞納等はなかったが、このところ無断欠勤が多かったという。(N新聞)


 *****


「遺書はなかった・・・か」

 ネカフェにいる男がつぶやいた。
 興味なさげに新聞を折りたたむ。

 幹線道路沿いの、どこにでもあるようなネットカフェで、各個室ブースにはTV兼パソコンが置いてある。

 店の壁はマンガがぎっしりつまった本棚が並んでおり、一昔前の漫画喫茶も兼ねているらしい。
 最近のネカフェはほとんどがこの形式をとっていた。

 男がリクライニングチェアに深く座り込んでいる個室には皮鞄が置いてある。
 荷物はそれだけだった。

 新聞を置き、鞄の中から本を出す。
 年季の入ったハードカバーの本だった。

 『催眠術のかけ方』の表紙をひと撫でする。
 もう1冊の本を出す。
 表紙には『催眠と闇夜』と書いてあった。

 『催眠術のかけ方』の前の持ち主はアンダーラインまで引いていた。

「最も効率が良いかけ方は周囲が見えず、振り子のみを対象が見ている状態」

 これを作り出せるのが『催眠と闇夜』の中に書かれていた。
 術者と相手の間に、夜の闇に包まれたような雰囲気と錯覚を起こさせる。
 これもやはり催眠術の一種だった。

 相手は脳貧血でも起こしたように、頭蓋の奥深くから両目という小さな穴を通して見ているような、視界が異常に狭く、モノクロに近くなるというものだ。

 男はコーヒーを取りに行った。

 ネカフェにはセルフサービスのドリンクコーナーが設置してある。
 ドリンク込みで長時間のパック料金もあり、一時期はネカフェ難民などという言葉も生まれた。
 ホテルよりも遙かに安く、賃貸住宅を借りるわけでもないので、固定収入や保証人もいらない。
 店舗によっては、シャワールームや歯ブラシなどのアメニティが完備されているところまであるのだ。
 横になって寝られる和室ブース、ブランケットどころか布団の貸し出しサービスがある店さえある。 泊まってくれと言わんばかりだった。

 個室に戻ってきて、淹れたてのコーヒーをひと啜りする。
 ソファに深く腰掛けて、タバコに火を付けた。
 そして、煙を見ながら思い出していた。


第2話に続く

2012/07/03 初版

前話へ ≪─≫ 次話へ
書庫に戻る
▲Page Top▲

Profile / Library / Library2 / Gallery / Comic / Column / Occult Post / Kaku-duke / Warehouse / Blog / Link

2010-2016 (C) e+- - All Rights Reserved.2010-2016 (C) e+- - All Rights Reserved.

inserted by FC2 system