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Doll Master2 〜2人目〜 第3話
飯場正臣

 男は迷わず、元の持ち主に後暗示催眠をかけた。
 特定の言葉を聞けば、発動することから、悪用はいくらでも出来る。
 例えば、クライアントの名前を絶対に思い出す事が出来ない暗殺者を作り出す事も。
 JFK殺害の一方法だったのではないかとも噂された、高度な技術だ。

 男の刷り込みには若干の情けが含まれていた。
 発動したら、その時に思い付く、最も高いビルから飛び降りる事になる。

 男は殺す事に何の躊躇いもなかった。

 催眠をかけた後、すぐに車内に侵入し、まずは本を入手。
 拾い上げて表紙を確認した。
 確かに例の欲しかった本だった。

 その後、RV車を運転して、美沙とかいう女の家に行き、バスルームで膣から流れ出る精液を洗い流してからベッドに寝かせた。
 ブラジャーだストッキングだと、とかく女性の着替えはオプションが多い。
 面倒な上に、寝ている人間は力が完全に抜けているので重い。
 もっとも、正確には催眠が解けたあとで、体力が尽きて気絶していたのだが。

 その後で、本の元の持ち主である男の家まで行き、布団に放り出して戸締まりまでしてやった。
 サイフの中から、男の住所を割り出すという面倒な調査のあとで、だ。

 挙げ句に自分はタクシーを使って、山道の入り口に停めてある自分の車まで行くハメになった。
 ここまで世話したのだ。

 金などいくらでも稼げる。
 だが、無駄な時間を使わされた恨みは大きい。
 時間は稼げないのだ。
 それに本を得る為なら手段は選ばない。
 男はそう決めていた。

 とは言え、貴重な本を“譲ってくれた”恩はある。
 後暗示催眠の発動キーワードは「ミサ」にした。

 助かる確率はかなり高い。
 生き残る方法が2つもあるのだ。
 知っているビルが異様に低い。
 昨日、嬲った女の名を口にしない。
 ただ、それだけ。

 もっとも、自分があの男なら、彼女の記憶を消去したいと考える。
 そんな事は出来ないので、やはり催眠をかけるしかない。
 自分と会っていたのは忘れかけている夢だったのだ、くらいが妥当なところか。

 あとは実際に会ってみればいい。
 目の前で会っても、自分が誰か分からなければ事は成る。

 例えば、彼女の仕事帰りにわざとぶつかってみる、とか。

 実際、あの男は事を成したんだろうと思った。
 だから死んだのだ。
 彼女の名を口にして。

 それにしても、女にうつつを抜かしている術士がいるとは思わなかった。
 まずは金だろう。
 何をするにも金はいる。

 時間を節約したければ金は必需品だ。
 世の中には成功のトライアングルがある。
 金・人・時間。
 この内の1つが潤沢にあれば、たいていの事は成功させる事が出来る。

 この時代、金はなかなか稼ぐのが難しい。
 催眠術師は多くの場合、単独行動をするので、人的資源もない。
 だから、多くの時間を費やすしかないのだ。

 催眠術の研究だけを考えても、研究室が欲しければ資金は必要だ。
 時間は買える。

 仕事もバイトもしなければ研究時間は増えるが、生活できなくなる為、ここでも生活費が必要になる。

 女だって金で買える。
 愛だの恋だの言っていても、世に聞く夫婦げんかのほとんどは金にまつわるものだという。
 男は若干、暗い面持ちで体格も太っていた為、モテたためしなどなかった。
 少々、歪んだ経済観念を持っているのは仕方がなかったのかもしれない。
 いや、今や徹底した拝金主義者になっていた。


第4話に続く

2012/09/04 初版

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