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Doll Master 2.5 〜その後〜 第37話
飯場 正臣 feat.大和武尊

 ここはデパートじゃないから、そんなことは出来ないのだと言う店員の胸ポケットに何枚かの紙幣を入れた男は、深く頭を下げた。

「協力して下さい、お願いします。俺には出来ないんです」

 何を言っているのかと思えば、贈答用にラッピングしてくれと頼んでいた。
 10分ほどで綺麗に包装された商品が、車に運び込まれた。
 それも店員がやってくれたのだった。

 ファミレスでは、外見が変わっていないので分からなかったが、男は確かに変わっていた。
 多少、おかしな行動をする事もあるようだが、世間と関わりを持ち始めている。
 ミサは少しだけ、男が羨ましくなった。
 財布の中身ではない。
 自然に社会に対して、心を開いている姿が。

 車に戻ると、ミサは男にブレスレットのような、腕時計のような、変わった腕輪を渡された。

「これ、便利なんです。あとでミサさんのケータイとペアリングしますね。メールや電話がケータイに来ると、このブレスが振動します。気付かなかったっていうことがなくなるんですよ」
「あの・・・私はあなた以外からメールが来ることなんてめったに・・・」
「俺なんかどうでもいいんですよ。お嬢さんが学校で気分悪くなったとか、そういう呼び出しがあるかもしれないじゃないですか。もっと早くに気付いていれば! なんて事になったらたいへんでしょ。ちょっと説明書、読んでてもらっていいですか?」
「・・・」

 ミサは唖然としていた。
 実際にあったのだ。
 娘が熱を出して早退させたいから、迎えに来れないかという学校からの連絡だった。
 もっともミサはパートで仕事をしており、職場では携帯電話をロッカーに入れておかないといけない。
 気付けるはずもなかった。
 あの時ほどみじめな気分を味わったことはなかった。
 夫は徹夜でゲームをしていたとかで、家にかかってきた電話に気付くことなく寝ていたそうだ。
 自分はパートが終わってすぐに学校へ迎えに行った。
 保健室で長い間、寝かされていた娘はぐったりとしていた。
 タクシーを呼んでもらい、急いで病院へと向かったが、娘はその間ずっとミサの服をしっかり掴んでいた。
 こんな私でも母親と頼ってくれるのだ。
 思い出す度に涙が流れそうになる。
 このブレスレットがあれば、もうそんな事にはならない。
 娘と自分を繋いでくれる。

「腕時計に見えるから、近くにケータイがなくてもいいんです。振動したら、トイレに行くフリでもして速攻でケータイチェックですよ。働くママさんには必須アイテムかなぁって」
「・・・」

 ミサは泣きそうになった。


第38話に続く

2015/03/04 初版

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