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Doll Master 2.5 〜その後〜 第40話
飯場 正臣 feat.大和武尊

 男は女性にプレゼントをするなんて初めてのことだった。
 そもそも女性と会う機会さえなかった。
 当然、あげることももらうこともなかった。
 それにしたって、洋服やアクセサリーではなく、人生、最初のプレゼントが家電なあたり、自分らしいと苦笑する。

 ひっくひっくとしゃくりあげているミサに対して、男はプレゼントする相手もいないし、誰かのために何を買おうかって迷うのはとても楽しかったと話した。
 自分はもらうよりも、差し上げたことが嬉しいのだとも。
 ネカフェのトイレで強姦しようとした男とは思えなかった。
 しばらくして落ち着いたミサは、どうやって恩返しをしていいか分からないと言ったが、男は気にしないで欲しいとしか返事をしなかった。
 子供の頃の話は本当だったし、誰かと出かけるなんて、どれくらい昔の話か分からない。
 男はただ喜ばせたかっただけなのだ。
 彼女が流したのは嬉し涙だと、頭では分かっていたが、あまりにも激しい泣き方だったので、悪いことをしたと思って小さくなっていた。

「そ、それじゃそろそろ・・・」

 男が車のエンジンをかけたので、今度こそラブホかと、ミサはしつこく思った。
 どんなプレイでもさせてあげようと思ったのだ。
 しかし、男は家の近くまで送ると言い出した。

「近所で降ろしますよ。家が知りたいとかじゃないんです。ミサさんの知り合いに見つかっても変な噂になってしまうでしょうし」
「なにかお礼を・・・」

 いらないいらない! と男は固辞した。

 正面を見たままで、ぼそぼそと話し出す。
 かなりストレスが溜まっているみたいだったから、話を聞いただけだ。
 男ははっきりと言った。

「だいたい分かるでしょうけど・・・俺には友達がいないんです。だから、綺麗な女性とお茶が出来ただけで嬉しいんです。もうお礼はいただいてます」

 真っ赤な顔をして、やっと言う男の顔を見て、ミサは戸惑った。
 悪党じゃなかったの?
 例の女を責める話題で盛り上がっていた時、たまに見せていた悪魔のような雰囲気もない。
 表情も穏やかだ。

 ミサはついにはっきりと聞いた。

「し・・・しなくてもいいんですか?」
「え?」

 男は一瞬、何を言われたのか分からないという顔をした。
 自分が知る限り、ミサ以上に魅力的な女性で、手の届く距離にいる存在はいない。
 でも、今日は話を聞きたいと思って来たのだ。
 口に出して話すと楽になることもある。
 男は、自分が催眠術師なのだとミサに言った時、十数年分の気負いが吹っ飛んだ気がしたのだ。
 誰にも言えなかったことだ。
 たった一言であれだけ楽になったんだから、真面目に生きているミサが何か抱えているなら、せめて話だけでも聞いてあげたいと思った。

「し、下着も・・・?」
「そりゃ欲しいですけど、ビデオカメラで恩を売ったみたいになっちゃうので・・・」

 ミサは本気で感謝した。
 お金がないのは確かだが、男は安っぽい同情などではなく、友達として接してくれた。
 それはお金では買えないのだ。
 いくら持っていたとしても。


第41話に続く

2015/03/24 初版

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