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Doll Master 2.5 〜その後〜 第43話
飯場 正臣 feat.大和武尊

 車内はハザードランプの断続的な小さい音だけが聞こえていた。
 集中すると直近の音しか聞こえなくなるのだった。
 23区内は車が途切れるなんて、夜中でも滅多にない。
 ましてや夕方はひっきりなしに車が通行し、路肩に停めてあるミニバンを次々に追い越していく。
 けっこうな騒音に包まれていても、男の集中は途切れなかった。
 研究者に特有の集中力だ。
 ノイズキャンセラー機能のついたMP3に似ていた。

 ミサは男が微動だにせず、考え始めたのを見て、黙って待つことにした。
 車を発進させる前、あっという間にペアリングしてくれたブレスレットに目を落とし、試しにケータイで自分のアドレスにメールを送ると、ヴヴヴヴと軽い振動が伝わってくる。
 凄い機能だと思いつつ、自分の周囲にこういう便利グッズを持っていないママさん達がいないという事は、そんなに苦労していないんだろうな、と羨ましい気持ちにもなる。

 男は自分の知識と記憶を総動員して、催眠にストレス解消を主とする利用法があるのかを思い出していた。
 あるのかもしれないけど分からない。
 よく調べてみないと分からなかった。
 精神に働きかける以上はそういうのもあると思うが、催眠はいずれ解けてしまうものだ。
 後暗示催眠で何かキーワードを聞く度に開放できるようにすることは出来るかもしれない。
 それにしたって、事前の実験は不可欠だ。
 男はミサに話して聞かせた。

「あくまでも予測でしかないし、意外に万能ではないんです。まずは後暗示催眠を置いといて、ストレスを解放することが出来るかどうか、落ち着いたところで試してみませんか?」

 男の提案にミサはすぐにやってみたいと飛びついた。

「危険はないですが、視覚、聴覚から入ってくる邪魔な情報を遮断したいんです」

 男はカーナビで最寄りのシティホテルがないか探し始めた。
 ミサはそれこそラブホテルでも構わないと言ったのだが、男が了承しなかった。
 ラブホは安いがいかがわしいし雰囲気満点だ。
 そういう気分にさせるのが目的なのだから仕方ないが、なったらなったで困る。
 催眠実験は、きちんと集中しないとうまくかからない場合がある為だった。

 男はすぐ近くにあるらしいシティホテルへと車を走らせることにした。

「すみません、少しだけ・・・ほんのちょっとで良いので、見下してもらえると助かります」
「え?」
「ラブホなんて入ったことないんですよ」
「あ、はい・・・」
「こんな綺麗な人と入ったら、浮つくに決まっています。ミサさんは自分の容姿と、俺の容姿のバックグラウンドをもう少し考えてくれないと・・・」

 男が恥ずかしそうに笑った。
 半分、冗談。
 半分は本当のことなんだろうとミサは思った。

 自分が綺麗なので、集中できないと困る。
 そう言うのだ。
 ミサは嬉しくなった。

 容姿を褒められた事も、これまでの気遣いも、これからストレス解放実験をしてもらえることも。
 世の中の女は・・・自分も含めて本当に男を見る目がない。
 一生、お姫様のように扱ってくれそうな男に女っ気がないなんて、信じられない。
 そう思った。


第44話に続く

2015/04/14 初版

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