2010-2016 (C) e+- - All Rights Reserved.2010-2016 (C) e+- - All Rights Reserved.

Menu / Menu (Frame On)

Doll Master 3 第2話
飯場 正臣 feat.大和武尊

 もちろんハッカーは裏の顔だ。
 表向きは深夜のアルバイトをしていることにしている。
 もっとも、それを誰に言うわけでもなかったが。
 近所付き合いもしていないし、友達もいない。
 ただ自分で決めている“設定”だった。

 ハッキングの仕事自体は、今回に限ってはそんなに面倒なものではなかった。
 アプリ−−スマートフォン用のアプリケーションソフト−−を無料で配布している個人だか集団だかが、使用者の位置情報とともに個人情報を抜き取っている疑いがあるという。
 米国ならそうした違法行為を取り締まる公的機関に雇われているハッカーもいて、FBIに協力するという話はよくある。
 だが、男のクライアントは違った。
 そのプログラムがほしいというのだ。
 はっきり言えば取り締まられる側だが、男も同じサイドにいる以上、倫理など関係なかった。
 報酬が相場よりも高かったので、プログラムを解析して分かりやすく説明文を付けることにした。
 それで意外に時間がかかっているのである。
 ハッキング自体はとっくに終わっていた。

 男はシャワーを浴びた。
 部屋のクローゼットに入っていたスリッパとバスローブに着替える。
 脱いだのは薄汚れたジーンズに、チェック柄のシャツ。
 年中、同じような服を着ていた。
 オシャレに関心はなく、それが無難な恰好だと思っていた。
 世間体に見ればオタクだろう。
 しかし、すれ違う人々に「絵に描いたようなオタクだな」と言われることはなかった。
 中肉中背、ブサイクでもなければイケメンでもない顔。
 まったく特徴がないので、人の目に留まらないのだ。

 学生時代もそうだった。
 その外見と平凡な成績に加えて、協調性がないため、ずいぶんと退屈な日々を過ごしたものだ。
 困るのは2人1組になれだの、社会科見学の班を作れだの言われた時に、誰かに誘われるでもなく、自分から声をかけるわけでもなかったので、あぶれた連中と組まなければいけないことだった。
 楽しいことなど何もない一方で、嫌なことはけっこうあった。
 おとなしくしているというだけで、突っつき回す輩はいるものだ。
 集中的にイジメられることはなかったものの、何かとつっかかられて悔しい思いもした。

 パソコンやプログラムに強くなったのは、必然だった。
 思春期の有り余る性欲はアダルトゲームに向けられ、いずれはそっち方面のプログラマーになりたかったのだ。
 極端なコミュニケーション嫌いは就職で仇になり、けっきょくは今の状況に落ち着いている。
 収入はあるので満足していた。
 社会的信用はゼロなのでクレジットカードひとつ作れないのだが、それはあくまでも現状で作ろうとした場合だ。
 学生時代に作っておいたカードをフル活用していた。
 文字通り、陽の当たらない生活。
 世捨て人のような暮らしは、学生時代の暗い記憶から抜け出せないという理由も多分にあったのかもしれない。


第3話に続く

2015/09/22 初版

前話へ ≪─≫ 次話へ
書庫に戻る
▲Page Top▲

Profile / Library / Library2 / Gallery / Comic / Column / Occult Post / Kaku-duke / Warehouse / Blog / Link

2010-2016 (C) e+- - All Rights Reserved.2010-2016 (C) e+- - All Rights Reserved.

inserted by FC2 system