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Doll Master 3 第49話
飯場 正臣 feat.大和武尊

「何回も電話してすみません」
「なにをおっしゃいます、オヤカタサマ! このサルはいつでもどこでも、出られる時には電話に出ますぞぉぉぉぉ」
「(それっていつでもどこでもじゃないのでは・・・)」

 男はタクシードライバーに電話していた。
 夕食のレトルトカレーを食べたあとだ。

 運転手の半田にモソハソと略されるゲームを知っているか?と聞いたところ、やったことがあるらしく、詳しく教えてくれた。
 レンタルDVDショップに行けば、3D乙も最新版も買えるという情報までくれた。
 男が一番、聞きたいことだった。

「な、なんかすみません。いきなりこんな事聞いたり、何度も電話して。情緒不安定みたいですよね」
「ふっ・・・情緒不安定ならあっしの方が上でさぁ、兄ぃ」
「ぶっ!」
「買い揃えるんですかな?」
「え? あ、ああ、3D乙ですよね。そうです」
「ぜんぜんご存じないのに・・・いやまあパソコンのゲームにかなり精通されているのは話していて分かりましたが、携帯ゲーム機はさっぱりのようですな」
「そうなんですよ・・・」
「なのに買い揃えると? 女王さ・・・ちがった! お嬢様にですかな」
「ま、まあ・・・そんなところです。実は俺、あの人が嫌いなんですよ・・・」

 男は自分がイジメられていたことをオブラートに包んで話した。
 その後の経緯は話さなかったが、こういう関係になったのは最近で、言うなればセフレみたいなものなんだけど、今日は嬉しいことがあって、それで・・・。
 男はついつい話し込んでしまっていた。

 半田は時折、相づちを打ちながらも静かに聞いてくれていた。
 てっきり自宅にいるものと思いこんでいたのだが、たまにクラクションの音などが受話器の向こうから聞こえてくるので、夜食でも買いに出ていたのかもしれない。

「なるほどなるほど」
「す、すみません、すっかり話し込んで・・・」
「お気になさらず・・・まずは本体ですがカラーバリエーションが豊富です。とは言え、ピンクだが赤だか黒だか・・・好きな色はなんだろうなんて迷っているよりも家電と同じ白にすれば無難でございますな」
「はぁ・・・」
「それにディスプレイの保護フィルムセットが必要です。すぐに表面が痛みますからな。あとハソティソグギアという拡張パッドとスライドパッドカバーもオススメです。持ちやすくなるんですよ。狩りはしっかり本体をホールドしなければいけませぬ。これに本体カバーとそれらを入れるポーチ。このポーチは革袋みたいなモソハソの世界観に合わせたものもございます。大容量のSDHCカードも必要でした! あぶないあぶない・・・ふぅ。これがないとセーブひとつ出来ないナリよ。ストラップの類は人によって趣味が違うので迷うところなんですが・・・他のアクセサリーと被るものもあるでしょうけどモソハソ用アクセサリーキットを買ってしまうという手もございますな。最後にイヤフォン。これはピンキリですが、最近のゲーム音質は侮れませんゆえ、ご予算の範囲で最高グレードのものがよろしいでしょう」
「(す、すげぇ・・・俺もPCヲタクだけど、これが本物のヲタか)」

 男は一気にまくし立てる半田に驚いた。
 ヲタクの傾向として、自分の好きな分野について早口でしゃべりまくるという習性がよく見られるのは知っていた。
 しかし、人付き合いがまったくない男にとって、これは初体験だった。

「この時間でもレンタルDVDショップは開いておりますが、あそこはとにかく周辺機器とアクセサリーの品揃えが良くないナリよ〜」
「う〜ん、それじゃ本体だけでも買ってきて・・・」
「ドッキンホーテなら揃うと思われますぜ。売り切れでも何カ所か回れば大丈夫でしょう。昼間なら家電量販店に行くなり、アキバあたりをうろつけばあっという間にコンプリートできるんですけど、この時間だとさすがに・・・」
「この近くにはドッキンホーテないですからねぇ」
「そんじゃ車で」
「免許を持ってないんですよ」
「あっしの自家用車で良ければ・・・軽ですが」
「いやいやいや! 相談に乗ってもらえただけで十分ですよ!」
「オイラの高校時代の先輩ならこう言いますぜ。“男にとって重要な任務は子供と女性の笑顔を守ることだ。なに!? レディにプレゼントを贈りたい野郎がいるって!? そいつは大統領命令を無視してでも協力しなきゃなんねぇ最重要任務だ”ってね」
「ちょちょちょっと・・・大げさですよ、ハハ」

<キンコン>

 部屋のベルが鳴った。
 ホテルの一室でうろうろしながら電話をしていた男は、心臓が飛び出るくらいに驚いた。
 おそるおそるドアを開けると、私服姿でハンズフリーマイクを持った半田が立っていた。

「あ・・・あの・・・運転しながら電話を?」
「このサルめがプロドライバーだってことを忘れちまったんで? オヤカタサマ」
「い、いや、でもほんとに悪いですよ。も、もう時間も遅いし、それに・・・」
「おパンティー様を取りに伺っただけですよ。だから“ありがとう”は言わんで下さい。お礼を言うのはこちらの方なんですから」
「そ、そんな・・・」
「ささ、出かける準備をして下さい。おっと! 夜型じゃないだなんて言わせませんぜ?」

 半田はサムアップして片目をつぶった。
 ぜんぜんサマになっていなかったが、最高に格好良かった。


第50話に続く

2016/12/20 初版

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