2010-2016 (C) e+- - All Rights Reserved.2010-2016 (C) e+- - All Rights Reserved.

Menu / Menu (Frame On)

Doll Master 3 第80話
飯場 正臣 feat.大和武尊

 この日は半田が仕事ということもあり、男は電話で送迎を頼んだ。
 少し離れた所にいるので時間がかかると言われたので、その場からメーターを回して欲しいと頼んだ。
 何度も断られたが、男も頼み込み、その場はメーターを回すことで話がついた。
 半田は到着してから、リセットすることも出来ると言って、とりあえず走り出すということになったのだ。

 男にしてみれば、近くから別のタクシーを配車してもらえばいいだけなのに、時間と燃料をかけてわざわざ遠くから来てもらうことに引け目を感じていた。

 ホテル前で実際に会うと、メーターは2万を超えていた。
 半田はリセットすると言い張ったが、男も営業させずにまっすぐ来させたんだからと譲らなかった。

「それでは、今度遊びに行ったらオイラに奢らせて下さいよ」
「遊びに?」
「買い物に行くとか、何か食べにいくとか、そういうのまた行きましょうよ」
「も、もちろん! お、俺で良ければ」
「何をおっしゃいます! このサルのノリに平気で付いてきて下さるお方はオヤカタサマ以外におりませんぞぉぉぉぉぉ!!」

 そうかもしれないと男は思った。
 そして、人間は表面ばかり見るつまらない生き物だな、とも思った。
 最初こそ唖然としたが、ドン引きするほどのものでもなし、ましてや彼は男気があるではないか。
 半田の面白さが分からない奴は、そいつがつまらない人間だからだくらいに思っていた。

 ちょっとした用事なら車内待機していると言ってくれたので、「メーター止めちゃだめですよ」と言い残して、男は食べ物や小型のプリンターを買いに何カ所か走ってもらった。
 最後に立ち寄ったのは東京は恵比寿のガーデンプレイスだった。

 銀行口座の確認をしたのだ。
 当初の報酬額に満足し、自社株を買わないで欲しいという追加報酬は全額寄付をする。
 窓口担当者と少し話をして、国内1箇所、海外2箇所へ分散して寄付をした。
 あまりにも相場からかけ離れているとニュースになる恐れがあるということだった。

 駐車場に戻ると半田が車外で大きく伸びをしていた。

「すみません、半田さん。仕事にならなかったでしょう」
「何をおっしゃってやがるんですかい! メーター回しっぱじゃないですか!」
「これを見て下さい」
「なんでがしょ?」

 男はスマートフォンの画面を見せた。
 初乗り運賃で規定の距離を走り、この時間までタクシーを営業した場合に何人の客を拾って、どれだけ稼げるかが試算してあった。
 距離に応じた燃料の消費と食事---ここでは牛丼の特盛2杯を目安にした---にかかる費用も忘れていない。

「これだと、メーターの料金よりもちょっと足りないんですよ」
「オヤカタサマの計算能力が高いのは分かりましたが、客待ち時間のない日はないんですぜ」
「しかし・・・」
「あっしもプロですから、規定料金以上はいただけませぬぞ」
「うう・・・」
「そんじゃ、1年以内にモソハソ始めてもらっていいですかね」
「え? なんで1年以内?」
「次のナンバリングタイトルが出そうじゃないですか」
「なるほど・・・」
「拙者、狩り友とハンティングしたことがないんでござるよ」
「・・・」

 半田の恥ずかしそうな顔を見て、男は約束した。

「1ヶ月以内に必ず!」
「マジっすか!?」
「俺、機体に触るのも始めてだから、確実に半田さんの足を引っ張ると思うんですよ」
「そんなん気にせんでも・・・」
「1週間以内に3D乙を買います。次の2週間で少しはまともに動けるよう練習します。毎日できるか分からないので、実質時間は数日になっちゃうかもしれませんが」
「ひゃっほぅ♪ 乗って下せぇ、ホテルまで帰りますよね!?」
「ええ」
「こっからは“回送”にさせてもらいますからね。助手席に乗って下さい。お客じゃなくて友達なんだから」
「はい!」

 その日、巷では、世にも珍しい車外へアニソンが漏れ出ているタクシーが走っていたとSNSで話題になった。


第81話に続く

2017/07/25 初版

前話へ ≪─≫ 次話へ
書庫に戻る
▲Page Top▲

Profile / Library / Library2 / Gallery / Comic / Column / Occult Post / Kaku-duke / Warehouse / Blog / Link

2010-2016 (C) e+- - All Rights Reserved.2010-2016 (C) e+- - All Rights Reserved.

inserted by FC2 system