2010-2016 (C) e+- - All Rights Reserved.2010-2016 (C) e+- - All Rights Reserved.

Menu / Menu (Frame On)

ぼくかの。 第四話(後編)
桃乃瀬ゆかり

 まるで脱衣所での事が夢だったんじゃないかと思われるくらいに、その後のお姉ちゃんはいつも通り平然としていた。
 ボクなんてこの後どうなってしまうのか色々と考えてしまって、ちょっと落ち込んでしまっていたのに。
 晩御飯の時にも、お姉ちゃんは特に変わった様子はなかったし、お母さんには結局、何も言われてはいないみたいだった。
 最悪、覚悟していた家出の危機はとりあえず回避できて良かった。
 さっきお姉ちゃんはちょっと意地悪でボクをからかっただけだったんだとその時は思っていたのだけれど。

「あのね。 ・・・ヒロくん。さっき言っていた宿題の件だけど、落ち着いたら部屋に来てもいいよ。コーヒーを二人分。砂糖とミルクをたっぷりで持ってきてね」

 ってお姉ちゃんに言われた。
 さっきの約束・・・本当に教えてくれるんだ。
 心臓がバクバクとしてした。
 お母さんが、「あら、智秋ちゃんがヒロくんの宿題のお手伝いなんてめずらしいわね」と言うと、「ふふふっ。まぁ、私の勉強にもなるしね〜」って、お姉ちゃんはボクのおちんちんを触りながらしたように、少しだけ目を細めて微笑んだ。


・・・


 久しぶりに入った姉ちゃんの部屋。
 お姉ちゃんの部屋で遊ばなくなったのは、いつの頃からだったろうか。
 漫画とか、ゲームとか、お父さんのお下がりのパソコンとか。
 何でも面白いものがいつもお姉ちゃんの部屋に転がっていた。
 昔は何も考えずにお姉ちゃんの部屋に遊びに行っていたけど、いつの間にかお姉ちゃんにはボクが勝手に部屋へ入ると、「あのね。女の子の部屋に勝手に入ってはいけませんよ」と注意されるようになっていた。
 それからだんだんと部屋に遊びに行きづらくなってしまったボクは、お姉ちゃんが中学校に行くようになって、普段から話す事も減ってしまっていたのだ。
 誰とでも仲良くなれて、物静かで、大人っぽくて。
 でも、怒らせると恐いお姉ちゃん。
 そんなボクのお姉ちゃんは本当は物凄くえっちな人だと知ってしまった。

「どちらにしろ、まずはテストをしますね」

 凄く綺麗にかたずけられた部屋は、甘いとてもいい匂いがした。
 ベッドの上に雑誌やらCDやらが散乱していた理恵ちゃんの部屋とつい比べてしまう。

「はい、このペンを使っていいから。あとコーヒーはこっちに置いとくからね」
「あ、ありがとう」

 ボクは、ずいぶんと芯の細いシャープペンシルを手渡されると、有無を言わさずお姉ちゃんの机に座らされた。
 お姉ちゃんは何だか凄く楽しそうだ。
 この甘い匂いは、隣にいるお風呂あがりのお姉ちゃん専用のシャンプーとボディソープの匂いだと気が付いて、なんだか少しドキドキしてしまう。

「じゃ、はじめ〜。出来たら声をかけてね」

 いけない、今はテストに集中しなくちゃ。

『次の図が示す部分の名称を答えよ』

 小学校では使うことがない、細い幅の横線がいっぱい並んだノートには、裸の女の人の絵と解答欄が描いてあった。
 絵は漫画っぽいけど、漫画と違っておっぱいの先も尖がった部分も、女の人のあそこも(線が一本だけだけれど)しっかりと描いてある。
 数ページに及ぶこのテストを、お姉ちゃんは夕食までの間に作り上げたようだった。

 ・・・お姉ちゃんって、部屋で一体なにをやってるんだろう。
 そんな事をふと考えてしまう。
 教科書もラクガキだらけで全然勉強をしていないんじゃないかと、お母さんが言っていた事があった。
 実際、ボクがこっそり見たお姉ちゃんの保健体育の教科書も、あちこちにパラパラ漫画や少しえっちな落書きがしてあった。

 えっと、おっぱいに・・・女性器。
 とりあえず解答欄に、解る所から答えを書き込む。
 頼れる知識は、この間、盗み見したお姉ちゃんの教科書と前に朋子さんが教えてくれた事だけ。
 予習もテスト対策もない状態のこのテストは受かる見込みが全然ない。
 軽い気持ちでやってもいいからとお姉ちゃんは言ってたけれど、ボクには頑張らなければならない理由があった。

「あのね。これはヒロくんにどのくらいの知識があるのかテストするだけだから。ちゃんと答えられたら約束通りもっと気持ちいい事を教えてあげてもいいよ」

 夕方の脱衣所での出来事のあとにした約束。
 オナニーについて、本当に何も知らないといったら、お姉ちゃんは凄くボクを疑いながら言ったんだ。

「それなら、どうしてお姉ちゃんのぱんつでおちんちんを擦ってたの」

 って。
 あれは単にお姉ちゃんが急に入ってきたからだと、色々言ってみたけど、結局、誤解は解けなかった。
 でも、オナニーがどんな事なのか、何をすればいいのかは知りたくて、正直にお姉ちゃんに聞いてみた。
 教えてくれる交換条件として、お姉ちゃんが出してきたのがこの試験だった。

「点数はあんまり気にしないけど、でもちゃんとマジメにやらないと教えてあげません」

 ベッドに寝そべって漫画を読みながら、お姉ちゃんが後ろで言った。
 うつぶせのお姉ちゃんの背中の上には、まだ微かに濡れた黒髪が散乱している。
 お風呂上りの時はたいてい髪を縛ってるけど、それでも背中を覆うには十分すぎるくらいの長い髪だった。

「ほらほら、試験中に余所見はダメですよ〜。カンニングと見なして不合格にしちゃってもいいのかな」

 注意されて即座に机に向かう。
 体を持ち上げてこっちを向いたお姉ちゃんのパジャマの胸元から不自然なくらいに大きな谷間が見えた。
 ほんの一瞬だけだったけど、普通の大人の女の人くらいに大きなおっぱいなのは間違いないだろう。
 少なくとも、見た感じは朋子さんの胸よりもずっと大きいと思う。
 朋子さんは背も小さいから仕方がないのだろうけど。
 お姉ちゃんのおっぱいがすごく大きいのは知っていたけど、いつの間にこんなにも大きくなったのかは、今となっては思い出せない。
 たしかお姉ちゃんが4年生くらいになるまでは一緒にお風呂に入っていたと思うけど、その時のお姉ちゃんの胸は、ボクのと全く変わりがなかった。
 シャツの袖の隙間とか、お風呂上りの時とかに見えた事はあったけど、おねえちゃんのおっぱいがこんなに大きくなっていた事に、今までまるっきり実感が湧かなかった。

『以下の単語の意味を述べよ』

フェラチオ
クンニ
パイズリ
ぱふぱふ

 ・・・なんじゃこりゃ?
 全然わからない。
 全く未知の用語が並んでいる。
 いや、最後のはどこかで見た覚えがある気がするのでなんとなくわかる。
 そうだ! 確か、おっぱいとおっぱいで顔を挟む奴だったかな。
 ふと、さっきチラリと見えたお姉ちゃんの胸元を思い出す。
 あの谷間に顔を埋めたらどうなるだろうか。
 頭をよぎった空想で、ボクのおちんちんがビクッと脈打ったのがわかった。
 そうでなくてもお姉ちゃんの部屋に入ってからというものおちんちんが膨らみっぱなしで、胸が切なくなるようなドキドキがまたひどくなっている。

「あら。またよそ見してるの? まじめにしないと10点減点しちゃいますよ」

 肘で半分体を起こした姿勢でこちらを向いているお姉ちゃんの胸元が、大きく開いているのが目に飛び込んできた。
 今度は心臓がドキンと大きく脈を打った。

「っ・・・」

 押しつぶされるような胸の苦しさに、思わず声が出そうになる。
 なんでこんなに苦しいのか、ずっとおしっこを我慢しているような苦しさがなんでずっと続いているのか。
 ボクにはその理由がわからない。
 わからないけど、今は目の前の問題に集中しないといけない。

『図aの部分の構造を模式図と説明文を用いて示せ』

 aの部分。
 女の人の裸の絵の、あの部分を示していた。
 要するに女の人のおそこ・・・女性器っていうんだっけか。
 その部分の絵を描けという事らしい。
 書くったって、どんな風に書けばいいんだろう。
 ボクが知っているのは何かコリコリとする突起と、割れ目の奥のぐにゃぐにゃした部分。
 その奥には赤ちゃんが成長するための部屋があるらしいのだけど、どんな形なのかまでは全然わからない。
 後は朋子さんのあそこに吸い付いた時にボクの顔と口の中を覆ったもじゃもじゃとした毛の事しか覚えていない。
 教科書に載っていた図は断面図を思い返してみたけれど、どう説明していいかなんてちんぷんかんぷんだ。

「これで、いいのかな」

 健一が拾ったっていう雑誌を見せてもらっておけばよかった。
 いまさら言っても仕方ないけれど。
 多分、こんな感じだろうな。
 あれだけ間近に見たし、そんなには間違っているはずはないだろう。
 書き終わってから少し考えてみる。
 そういえば、お姉ちゃんのあそこもこんな風になっているのだろうか。
 コリッとした突起があってそこを吸うと気持ちがいいっていうのかな。
 ・・・それから、朋子さんみたいにもう毛が生えているのだろうか。
 最後に一緒にお風呂に入ったのはいつ頃だったっけ。
 あの頃はなんとも思わなかったけど、お姉ちゃんの女性器は一本線のワレメになっていて毛も生えていなかった。
 裸になったお姉ちゃんを想像してみる。
 昔はなんとも思わなかったのに、今から考えてみると一緒にお風呂に入っていたのって物凄い事かもしれない。

「もう、終わったの?」

 耳元でおねえちゃんの声が聞こえて、ビクっとなった。
 すぐ近くに来たお姉ちゃんの髪と体からシャンプーとボディソープのいい匂いが漂ってきてボクを包んだからだ。

「あらあら。なにか、いやらしいことでも考えてたのかな〜。えっちさん」
「解答のチェックをしてたんだ・・・」

 お姉ちゃんの裸を想像していたなんて、絶対に言えない。

「うん。よしよし、大体終わってるみたいだね〜。それじゃこのまま答え合わせもしちゃうよ」
「え・・・」

 何も言っていないのに、お姉ちゃんがボクからノートを取り上げる。

 ふにっ

 瞬間、ボクの背中にちょこっと押し付けられたお姉ちゃんのおっぱいは信じられないくらいに柔らかかった。


・・・


「22点…くらいかな。普通は赤点です」

 しゃかしゃかと、赤いボールペンの音が鳴り止んだ後、お姉ちゃんが言った。
 ペケをつける音が多いなと思ってはいたけど、ここまで出来が悪かったとは予想外だった。

「え、なんで!? これとか、どこが間違いなの?」

 思わずノートを取り上げる。
 解答欄がまちがっていたりとかは、していないようだ。

「えーとね。そもそも言葉がカタ過ぎです。これとか」

『次の図が示す部分の名称を答えよ』
 の問題の、裸の女の人のアソコの部分を指差した。

「女性器、じゃダメなの?」
「残念ながらそれだとペケだそうですよ。えーとね、膨らんだおっぱいも女性器なんだってさ。だからコレだと不正解になっちゃうの」
「だって、男にもおっぱいあるじゃん」
「つべこべ言わない。コレの正解は・・・わかる?」
「わかんないよ。女性器でないなら、おちんちんとか?」
「それは男の子のでしょ。ヒロくん本当に知らないのね・・・」

 何かを言いたそうにしていたお姉ちゃんだったけど、結局、何も言わずに他の問題を指差した。

「次に、これなんだけど。こっちもちょっと違ってるんだよね。これじゃ、3点くらいかな」

『aの部分の構造を模式図と説明文を用いて示せ』
 の問題で、ボクの書いた絵の事だ。

「どの辺りが間違ってるの?」
「これ。女の子のおしっこが出るところが全然違うんだけど」
「え、男だとこの辺じゃないの?」
「だってさ、この丸いのはクリトリスでしょ? なんでオシッコでるところがこの上なの」
「だっておちんちんのある場所についてるから」

 理恵ちゃんや朋子さんのあそこにあった、コリコリとした物の事を言っているのだろう。
 あのコリコリを咥えたら理恵ちゃんがお漏らししてしまったり、朋子さんがガクガクと痙攣しながらドロドロした液が出てきたりした。
 あれってクリトリスって言うんだ。

「だって、そんなの、知ってるわけないよ。だいたい女の子のオシッコなんて見た事無いし」
「・・・まぁ、そんなの見てても困るか・・・うん。でも、文句は言わないの。でもこれじゃあ、マジメにやったとは、ちょっと思えないかな。それとも知っててワザとおとぼけとか。あ〜あ。こんなに不勉強な子が相手じゃ、オナニーとか教えてあげられないな。うん残念だ」

 おねえちゃんが、ぱたんと音を立ててノートを閉じた。

「えー。そんなの、ずるいよ。予習しようのない問題ばっかりじゃん!」
「あらあら。ずるくないですよ?」

 さらりとお姉ちゃんが流す。
 お姉ちゃんがボクをからかう時は昔からこうだった。

「けど、約束どおりに一生懸命、書いたんだから、教えてくれてもいいじゃん」

 思わずムキになった。
 約束を破られた事よりも、ボクが知っている事、今まで見たことを簡単に否定されたような気がして少し頭にきてたのかもしれない。

「ふふふ。じゃあ、ちゃ〜んと予習が出来るならもっと頑張れるって事かな?」
「え? 予習って?」

 予想外のお姉ちゃんの言葉に、一瞬たじろぐ。

「予習というか、補習です。で、その後で再テストをうけてもらいます」

 もう一度チャンスをくれるという事らしい。
 まあ、お姉ちゃんの事だし、もう一度、騙されてからかわれるという事もありえるけど。

「わかったよ。じゃあ、やるよ・・・予習。そしたら今度こそ教えてよね。その・・・オナニー」

 ゲームみたいで面白いと思った。
 出されたクエストは解くのが勇者の務めだからね。
 なんて、勢いで挑戦に乗ったけれど。

「ただし、今度はちゃんと合格点越えなきゃダメですからね」

 そう言って、すっと目を細めて微笑んだ。
 お姉ちゃんは甘くはなさそうだった。


第五話に続く

2010/06/18 初版
2010/08/10 『Aliceの図書館〔新館〕』にて掲載

前話へ ≪─≫ 次話へ
書庫に戻る
▲Page Top▲

Profile / Library / Library2 / Gallery / Comic / Column / Occult Post / Kaku-duke / Warehouse / Blog / Link

2010-2016 (C) e+- - All Rights Reserved.2010-2016 (C) e+- - All Rights Reserved.

inserted by FC2 system