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ぼくかの。 第七話(中編4)
桃乃瀬ゆかり

「・・・あ、あの、野都さん大丈夫? 歩けそう?」
「ううう、全然、大丈夫じゃないけど・・・後ろに倒れ込んだのは私だし。そもそも、こんな事を頼んだのも私だし」

 ふらふらと歩く野都さんを支えるように、肩を貸す。
 とりあえず、足を捻ってしまった野都さんを家まで送っている・・・事になっている。


・・・


 全てを放出した後。
 何だか、とんでもなくひどい事をしてしまった気になって逃げ出したかったけど、ぐっとこらえる。
 智秋お姉ちゃんにそう言われたし、何よりまずは野都さんの体が心配だ。

「あ、あの・・・」
「・・・なあに、高木くん・・・」

 凍えるような空気。
 野都さんはよろよろと壁に掴まりながら立ち上がった。
 トイレのドアに寄りかって涙目になっている野都さんに、ボクは勇気を振り絞って声をかける。
 もしかしたら、殺されるかもしれない。
 引きつった無表情の野都さんを見て本当にそう思った。
 こんな時、男って無力だなぁ。
 ボクのおちんちんはまるで小動物のように小さく股間で縮こまっていた。
 驚くほどいっぱい精液が出ていた感覚があるのに、ズボンにも股間の周りにも飛び散った痕跡はない。
 縮こまってしまったおちんちんから、残っていた精液がぽたぽたと便座のふたに垂れている程度だ。

「しょ、しょ、処女膜とか破れちゃって・・・ないよね」
「・・・それは大丈夫だと思う」

 でも、野都さんのどこかに刺さった感覚はあったわけで・・・。
 精液が出ているときにも、今までに出しているときとは違い、どくんどんと脈打つたびに強く握り付けられたような圧迫感があった。

「もしかして・・・おし・・・」
「・・・もらっていいかな」
「え?」
「・・・」
「あ、あの・・・」
「・・・」
「野都さん?」
「・・・高木くん、悪いんだけど先にトイレから出てってもらえるかな」
「えっと?」
「・・・高木くんが出しちゃったの、ちょっと出て来ちゃいそうなの」
「!」
「お願い、外に出てて」

 ボクは慌てて転がるように女子トイレから飛び出した。


・・・


 一応、念のため男子トイレに入り。
 おしっこを済ませてから水を付けたトイレットペーパーで、おちんちんを念入りに拭いておく。
 すぐに病気になったりはしないだろうけど、万が一という事もある・・・場所が場所だけに。
 トイレの前でしばらく待っていると、服装を整えた野都さんがふらふらと出てきた。

「ゴメンね、お待たせ」

 引きつってはいたものの、どうやら殺されるような事はなさそうだ。

「ううん。大丈夫?」
「・・・」
「まだ痛い? おし・・・」
「言わないでっ!」


・・・


 そんなこんなで、この状況である。

「・・・あ、あの。野都さん大丈夫? 歩けそう?」
「ううう、全然、大丈夫じゃないけど・・・後ろに倒れ込んだのは私だし。そもそも、こんな事を頼んだのも私だし」

 ふらふらと歩く野都さんを支えるように、肩を貸す。
 とりあえず、足を捻ってしまった野都さんを家まで送っている・・・事になっている。
 いつもの通学路とは別の道を歩くのってかなりドキドキする。
 しかも女子に肩を貸してだ。
 理恵あたりに見られたら何を言われるかわからない。
 とにかく今回の事も含めて黙っていてもらう約束を取り付けなくてはいけない。

「あのさ、さっきの事だけど」
「言えない・・・って、いうか誰にも話せないです。お願いだから秘密にしておいてくれませんか」
「もちろんボクはそのつもりだけど。ごめんなさい」
「・・・ごめんなさいは私の方」

 ようやくいつもの野都さんの表情に戻っている。

「・・・」
「高木くんの事が気になっていたって言うのは嘘じゃないんだよ。でもね、こんな事するつもりでもなかった」
「そうなの」
「うん。朋子先生との事を見たって言ったけど、廊下の外からだったから。正直に言えば、良くわからなかったの」
「え・・・」
「姫宮さんの言ってる事だって、最初はあんまり信用してなかったんだ。姫宮さんって高木くんの事好きなんでしょ」
「理恵がボクを? しょっちゅう文句、言われてるし嫌われてる可能性もあるんだけど」
「高木くんと堀田さんの事だってそう。私は授業中に高木くんを見ている事が多かったの」

 そう言って野都さんクスリと笑った。

「・・・そうなんだ」
「だから、気がついたの。姫宮さんもね、良く高木くんの事を見てた。だからわかるの」

 これって告白なのだろうか。
 だとしたらボクはどう答えるべきなのだろうか。

「野都さん」
「別に、私と付き合ってとかそう言う話じゃないの。でもね、今日の感じだと私としたように、暴走した姫宮さんともしちゃった可能性は高いんじゃない? 言ってたこと、本当なんだなって思った」

 ・・・怖い、野都さんの洞察力って。

「いや、あの。・・・その」
「でも、これで堀田さんや姫宮さんともイーブンでしょ。ゆっくり選んでくれていいから」
「・・・」
「ひとつ、お願いがあるんだけど」
「・・・なに?」

 ボクが横を向いた瞬間、ボクの唇に野都さんの唇が触れた・・・。
 一瞬だったけど、確かに僕達はキスをした。

「私のファーストキス、高木くんが今まで誰としたかは聞かないけど。私のは正真正銘のファーストキスだからっ」

 唖然としているボクに、野都さんはにっこりと微笑む。

「え、あ、あの」
「ここまででいいよ、家はもうすぐそこだから」
「・・・うん、また明日。学校で」

 そう言うのが精一杯だった。

「そうだ、もうひとつお願い」
「なに?」
「今度の移動教室では、男女三人づつで一班を作るそうです。だから私と同じ班になって下さい」
「でも、約束はひとつじゃ」
「ただでとは言いません、お礼にあげますから」

 そう言って手を振りながら野都さんは帰って行った。
 ボクはただ、その姿を見送る事しか出来なかった。
 今、とんでもないクエストのフラグを立ててしまったのかもしれない。
 ところで、野都さんはお礼に何をくれると言うんだ。


第七話(後編)に続く

2010/10/07 初版
2011/01/04 『Aliceの図書館〔新館〕』にて掲載

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