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ぼくかの。 第七話(後編)
桃乃瀬ゆかり

 うーん、移動教室ねえ。
 行かないって選択肢は・・・ないだろうなぁ。
 でも、どう考えても気が重い。
 六人で一班、由衣ちゃんと理恵と野都さんに囲まれての移動教室。
 それは天国なのだろうか、それとも地獄か。
 絶対に地獄な気がする。
 だいたい男はどうする・・・タカヒロかダイスケか・・・あいつらにこの状況がバレるのもマズイ。
 健一は・・・考えたくはないが最後の手段だな。
 考え事をしながら歩いていたボクは、買い物袋を抱えたフリフリの洋服を着た女の子にぶつかってしまう。

「ぎゃう」

 恐竜の子供のようなおよそ女の子らしくない叫び声。

「あ、ごめんなさい!」

 ボクはあわてて彼女がひっくり返した買い物袋の中身を拾い集める。
 鶏肉にタマネギに牛乳パック、どうやらパックの卵も割れていない。
 それに、えっと髪の毛・・・え? 髪の毛、かつら?

「す、すいません。こっちこそ考え事を・・・あーっ!」

 どっからどう見ても、フリフリの洋服を着た女の子だったけれどウィッグを取ったその顔はまぎれもなく男の子で微かに記憶にもある。

「・・・」
「あれ? えっと、君は確か」

 ぼくからウィッグを奪い取ったその女の子・・・いや女の子の格好をした男の子は頭にかぶるとぶるぶると震えていた。

「ふえええ、バレた。バレちゃった・・・」
「大丈夫? 足から血が出てるじゃないか」
「あうあうあう」

 とりあえず震えている女の子、じゃなくて女の子の格好をした男の子に肩を貸して近くの公園へと連れて行く。
 蛇口で傷を洗い、とりあえず押さえるものを探す。
 しまった、ハンカチくらい持ち歩く癖を付けておくんだった。

「傷口は深くないけど、帰ったらちゃんと消毒しておいた方がいいよ」
「・・・うん」

 その女の子の・・・って面倒くさいから以降は男の娘はされるがままにボクについて来た。
 二人でベンチに腰掛ける。

「何も聞かないの?」

 おそるおそると言った表情で男の娘はボクに話しかけてくる。

「言いたくないなら何も聞かないよ。誰にでも人に話せない秘密や性癖を持ち合わせているものだから」

 ついさっきまでのことをボクだって話せないからおあいこだ。
 そうとは言わないが深くそう思う。

「そうなんだ、じゃあこの事は・・・」
「もちろん秘密だよ。男と男の・・・でいいんだよね、約束だから。あ、これ傷口、押さえるのに使って」

 ちょうど、胸ポケットに入っていた手頃な布きれを見つけて、ボクが手渡しながらそう言うと男の娘はおかしそうに笑った。

「そっか、高木くんってそういう人だったんだ」

 高木くんか、やっぱりクラスメイトで間違いがないようだ。

「どういう人だと思われたかはわからないけど、約束は守るよ。誰にも言わない」
「ありがとう。ボクも誰にも言わないよ・・・でもね、こういうの泥棒するのはやめた方がいいと思うよ」

 はい?
 何をいってるんだこの男の娘はって思った後で野都さんの笑顔が浮かぶ。

「・・・やば」
「いっつも教室で話してるもんねー。んふふ〜。パンティに興味があるって。どうしても欲しいならぼくが買ってきてあげようか」

 男の娘にして、クラスメイトの保科蒼一郎くんの手に握られているのは紛れもなく野都さんの黒パンティで・・・。
 どのような誤解をされようとも、ボクに弁解の余地は無いように思われた。
 ・・・まさか全部、話して、野都さんにもらったと言えないし。
 そもそも野都さんとの秘密も守らなくてはいけない。

「・・・その時はよろしく頼むよ」
「んふふ、いいよ〜。ぼくの履いてたのでよければいる? 可愛いのあるよ〜」

 自爆だ。
 どうとでもなれ、ぼくのゲーム。
 リセットボタンがあるならば押してしまいたい。


第八話に続く

2010/10/12 初版
2011/01/04 『Aliceの図書館〔新館〕』にて掲載

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