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「える・ふぇち」 (3)
桃乃瀬ゆかり

 これはある初夏の日に起きた出来事。
 私、岡野菜緒は放課後の教室で、一人、眠っていた。
 正確には半覚醒という状態で、ある程度は意識はあったが、動くのが面倒で机に倒れ込むようにしてただ目を瞑っていた。
 最近、テレビゲームにハマっていて、寝不足が続いていたせいだった。
 その時、教室のドアが開き、クラスメイトの一人が入って来た。
 ちょうど寝ている私の横で、立ち止まった気配がした。
 隣の席の子であるなら、彼女はクラスメイトの後藤結乃だろう。
 結乃は小学校の頃に近所に住んでいた女の子だった。
 小学四年生の時に、私の両親の都合で転校し別れ別れになっていたが、中学生なって再会した女の子だ。
 きっと部活が終わり、教室に残してあった荷物でも取りにきたのだろう。
 微かに甘いメイプルシロップの香りが私を包み込んだ。
 そう言えば、結乃は昼休みに今日は部活の実習でホットケーキを焼くのだと、同じ家庭科部の女子と会話をしていた。
 そんな事を考えていると突然、何か刷毛の様なものがが私の頬に触れた。
 くすぐったい。
 なんだろう、メイプルシロップの甘い香りが強くなる。
 薄目を開けると、どうやら結乃が私の寝顔を覗き込んでいた。
 私の頬をくすぐっていたのは、結乃のセミロングの髪の毛だった。
 寝ている私に覆い被さるように、結乃の唇が近づいて来る。
 まさか、キスをする気?
 そう思った時にはすでに、結乃の唇と私の唇は触れあった。
 甘いメイプルシロップの味に混じって、焦げたホットケーキの微かな苦味がふんわりと私の口の中に広がっていく。
 ドキドキドキドキと、心臓の鼓動が跳ねあがるのがわかった。
 ファーストキスはレモンの味。
 そんな少女マンガの台詞を信じていた訳ではないが、結乃の唇は、私の鼓動を早める魅力的な味と香りだった。
 もうしばらく、こうしていたかったけれど、結乃の髪の毛が私の首筋を撫でるようにくすぐるのだ。
 もう我慢の限界だった。
 私が目を開いた瞬間に、結乃はびっくりした猫のように飛び上がると、その場にへたりこんだ。

「あ、あのね、菜緒」

 驚かせるつもりはなかったけれど、結果的に驚かせてしまった。
 まずは結乃を立たせようと、近づくと、それまでの感じでいたシロップの甘い香りとは違う、 ツンとする香ばしい匂いに包まれるのを感じた。

「あれっ、嫌だ…」

 結乃は、今にも泣きそうな表情で真っ赤になっていた。

「!」
「やだっ、やだっ、どうしよう」

 座り込む結乃を中心に水溜まりが広がっていく。
 結乃が、お漏らし…。
 なぜだろう、おしっこの匂いなんて決して心地良いものではないはずなのに。
 興味本意で隠れてお酒を口にした時の衝撃がよみがえった。
 まだ温かい結乃のおしっこからは、ツンと香るアンモニア臭を含んだ湯気が立ち上ぼり、私の脳をくらくらとさせていた。

「ねぇ…結乃、大丈夫? 立てる?」
「あのね…、菜緒。ごめんね。ごめんなさいっ」

 私は自分の制服が濡れてしまうのも構わずに、結乃に近寄るとギュッと抱き締めた。
 結乃のおしっこ、すごくいい匂いだ…。
 ずっとこうしていたい気持ちはあったが、こんな状況を誰かに見られる訳にはいかなかった。

「結乃っ、静かに! 自分で立てるのなら、トイレに行って濡れた下着とか脱いで来なよ。こっちは私が片付けておくから」
「…菜緒」
「大丈夫、誰にも気付かれないうちに早く」
「…ごめんなさい」
「謝るのはいいから。まずは着替えて来て。今日は家は誰もいないから、シャワー貸せるから」
「…うん、わかった」

 結乃が教室から出ていくのを見届けると。
 私は掃除用具入れから雑巾とバケツを取りだし、結乃のおしっこを集めていった。
 集めながら、ゾクゾグする妖しい興奮に包まれていた私は、結乃のおしっこの匂いに性的興奮を覚えていた。
 それどころか結乃のおしっこを味わってみたいという衝動にさえ駈られたが、さすがにそれは汚いと思い止まった。
 もっとも、汚いと感じたのは結乃のおしっこに対してではなく、教室の床や雑巾に対してのものだっだ。

「…菜緒、ごめんね」

 一通り片付けを終え、用具を洗うために流し場に向かうと、目を真っ赤に腫らした結乃が私を待っていた。

「教室の方はもう大丈夫だから」
「うん。ありがとう」
「…じゃあ、私の部屋に来て」
「…でも」
「そのままじゃ家に戻れないでしょ。それに…」

 ──このまま別れるなんて、我慢が出来ない!
 この事件が、私達が特殊な性癖に目覚めていくきっかけになった。


(4)に続く

2013/05/14 初版

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