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百物語 五十一の語り
鈴鳴零言

 さて、今回は鎌倉のある場所です。

 ◆ ◇ ◆

 昔、この地に東勝寺という、北条氏の菩提寺があった。
 1333年、鎌倉時代末期に、北条高時を始めとする、北条一族と家臣が自刃した地である。

 今も東勝寺は跡地として残っている。
 そして───その跡地に「腹切りやぐら」と呼ばれるものがある。
 名前からして“何かある”と思わせるには十分なものであり、やはりというべきか、幾つかの噂が伝わっている───。

「(夜・夜中に)腹切りやぐらに行って、家に帰ると、まるで切腹でもしたかのように、服に血がべっとりついている」
「腹切りやぐらを覗いていると、上から首が切り落とされる」
「この辺りに家を建てると、夜、武士の亡霊にうなされる」
「夜中、コップに水を入れて外に出しておくと、朝には無くなっている」

 ───などがある。

 城址跡でよく聞かれる噂や、戦地跡にある噂は大体共通する。
 だが、それは噂が広がっただけでは無く、共通の想いが、その地に染み付いているからではないだろうか・・・。

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 心霊スポットとしては、夜中には行ってはいけない、という場所に挙がる一つだったと思います。
 「服に血がべっとり───」というのは、夜中に行くと起こりやすいらしいとか・・・。
 昼間でも「帰ってきて、家族に指摘されて驚いた」なんて話もありますので、昼だから安全ということでもないようです。

 軍記物語「太平記」によると、自刃したのは北条一族283人、家臣870人となっているそうです。
 詳細を知るなら「元弘の乱」から調べると良いかと思います。

 では、これにて五十一の語り「腹切りやぐら」了。


五十二の語りに続く

2010/10/01 初版




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百物語 五十二の語り
鈴鳴零言

 さて、今回は肝試し系のお話にある、定番の一つです。

 ◆ ◇ ◆

 ある時、近くの廃病院に肝試しに行こうということになった。

 そこは一般的にイメージしそうな、廃棄された機材が放置されている───ということはなく、むしろ「何も無い」と言ったほうが正しい廃ビルだった。
 壁や床、天井も壁材が剥がされ、コンクリートが打ちっぱなしの状態になっており、電灯なども外され、配線だけが突き出ているといった具合だ。
 建設途中のビルや、テナントの入れ替えで内装工事中の場所、と言うほうがしっくりくるだろう。
 ところどころに、侵入した誰かのゴミが捨てられている、と言うのはお約束だが、それでも他の場所に比べると無いに等しかった。
 そんな場所なので、明かりさえ持っていけば、割と安全な暗闇の散歩ができる。

 廃病院にて、どんな感じで回ろうかという話になった。
 ───考えた結果、1人ないし、2人で上の階まで行き、下の広場みたいなところに待機しているメンバーに合図してから戻ってくることにした。
 ちなみにメンバーは5人である。

 最初に、2人で向かったメンバーが、4階から懐中電灯を振って合図してきた。
 屋上は鍵がかかっているので、4階が最上階になる。
 下で待機していたメンバーも、懐中電灯を振って合図を返した。

 次に、また2人でメンバーが4階に向かい───そして合図をする。

 最後に、まだ行ってないメンバーが1人で行ってくると言う。
 最初から1人ないし、2人の予定ではあったが、誰か一緒でなくていいのか? と訊く。
 1人で大丈夫だ───と言うので、気をつけて行ってこいということになった。

 ───しばらくして、4階に懐中電灯の明かりが彷徨うのが見えた。

 4階にいたメンバーは、慣れた感じで足を進めていた。
 不気味な感じはあるが、1人で行けないなんてことは無い。
 じきに合図をする場所までたどり着いた。
 下の広場に向かって懐中電灯を照らし、もう片方の手を振ってみた。
 下にいるメンバーも懐中電灯を向けてきたが───何か様子がおかしい。
 身振り手振りからすると、すぐ戻って来い・・・だろうか?

 なんだってんだ?───と思いつつ、下に戻る。
 合流すると───、

「大丈夫だったか!?」
「とにかくここを離れよう───」

 ───といった感じに、ちょっとしたパニック状態だった。
 皆が落ち着いたとこで話を聞く。

「───4階の窓から、お前が手を振っただろ? あの時、4階の窓全てから、たくさんの人影に手を振られたんだ・・・」

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 基本は「合図する人と一緒に、たくさんの人影が手を振ってくる」というものです。
 派生系によくあるものは───、

 舞台が「廃病院・廃ビル」ではなく、「学校」の場合。
 たくさんの手を振る人影が、「同じ階」だけでなく、「屋上も含まれる」または「同じ階ではなく、屋上のみ」の場合。

 ───この辺りの組み合わせが多いでしょうか。
 あとは「人影がはっきり」していたり、「白い人影」であったり、といった人影についてや、「最後に振り返ると、屋上と窓の全てから手を振られていた」なんてパターンもあります。

 想像すると、見た目がまともならまだ良い───こともないですが、血だらけだったり、朽ちていたりしたら、最早ゾンビ映画状態です。
 実際には出遭いたくない状況の一つではあるでしょう。

 では、これにて五十二の語り「手を振る人達」了。


五十三の語りに続く

2010/10/02 初版




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百物語 五十三の語り
鈴鳴零言

 さて、今回も有名なお話の一つで、アクティブな幽霊です。

 ◆ ◇ ◆

 いつの頃からか、深夜のある時間帯に幽霊が出るという噂が広まった。
 遭遇した人も多く、人によって───、

「全身が見える」
「スニーカーを履いた足だけが見える」
「姿は見えないが、足音が聞こえる」

 ───といった差はあったが、おそらく同一の幽霊だろう、と言われていた。
 その幽霊、姿がタンクトップに短パンという───マラソンや駅伝の選手、といった格好であり、足音の場合も、走っている感じの足音だった気がする、という一致をみていたからだ。

 噂が広がり、野次馬が増えた頃───ある一人が、幽霊の走っていく道にゴールテープを張った。

 幽霊が出る時間帯になり、噂の幽霊が現れた。
 そして幽霊は、張られたゴールテープを通り過ぎ───また、見えなくなっていった。

 それ以降、走る幽霊を見たという噂は途絶えたという・・・。

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 有名なお話ですので、派生系の一つは見たことがあるのではないでしょうか。

 「タンクトップ姿」か「ジャージ姿」などで、「マラソン」または「ジョギング」する幽霊。

 大学内で起きたという派生系では、移動ルートが校舎を突き抜けるものもあります。
 その場合、ゴールテープを張るのは一緒ですが、道ではなく、校舎に張っています。

 他には、走る幽霊が出てこなくなったのではなく、出てくる頻度が大きく減った、というものでしょうか。

 お話の中で「どうやら成仏したらしい・・・?」という類のものは珍しいかもしれません。
 有名なものになるほど、次に誰かが遭遇する可能性を残した話がほとんどでしょう。
 土地に縛られたものだと、成仏しても犠牲者が交代するだけ───などで、状態は維持されています。
 本当に成仏───呪縛が解けると、そのうち話題に上らなくなり、いつしか話が風化して忘れられてしまうのが普通だと思います。
 このお話のように、とんちが利いているネタが絡んでいる───など、記憶に残りやすいものしか残らないのが必然なのでしょう。

 では、これにて五十三の語り「ゴールテープ」了。


五十四の語りに続く

2010/10/04 初版




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百物語 五十四の語り
鈴鳴零言

 さて、これは想いが残留し、現実に影響を与えたお話。

 ◆ ◇ ◆

 ある小学校の学芸会で、女の子が女王の役を演じることになった。
 女の子は毎日、張り切って練習し、本番の日を心待ちにしていた。

 そんなある日の学校の帰り道───。
 女の子が大通りにある横断歩道を渡っていたとき、一台の車が女の子を撥ねた。
 すぐ病院に運ばれたが、数日後、治療の甲斐無く、女の子は亡くなってしまった。

 この事をきっかけに、その場所には横断歩道と並んで、安全のために歩道橋が設置された。

 しかし───。
 この歩道橋、すぐ隣に横断歩道があるため、あまり使われていなかった。
 ここを通学路としている子供に、安全のために使うように───と言い含めてはいるが、強制力があるわけではない。
 それと、この歩道橋が出来て少し経った頃から、ある噂が立ち上り始めていた───。

 曰く、一人で歩道橋を渡っていると、誰かの足音が聞こえる───と。
 そして、その足音を聞くと、ぶつけたり、転んだりと───小さな怪我をする・・・。

 ───そんな事もあり、歩道橋はさらに使われなくなっていった。

 ある日、暗くなった頃、教師が噂を確かめるべく歩道橋に訪れた。
 仕事を片づけていたら、こんな時間になってしまったのだが、丁度、人通りも車通りも少ない時間であり、噂を確認するには良い時間だった。

 教師は、おそるおそる歩道橋を上り始めた。
 ただの噂───という気持ちが半分、もし本当だったら───という気持ちが半分、といったところである。

 階段を上りきり、歩道橋の中程まで歩いてきた。
 やはり、ただの噂か───と思う。
B  反対側の階段まで来たところで、不意に───カンカンカン───と、勢い良く階段を上ってくるような音がした。
 ドキリ、として後ろを振り向く。

 ───少し待っても、誰も上ってくる様子がない。

 急激に怖くなって階段を駆け下りる───が、勢い余って階段を踏み外してしまう・・・。

 幸い、階段の終わり近くだったので、たいしたことはなかったが、転んだ拍子に足を捻ったようだった。
 足をさすりつつ起き上がったところに、丁度、立て札が立っていた。
 この歩道橋が設置された理由などが書いてある立て札だ。
 ふと、その中の一文に目が行った。
 まだ新しいものなのに、変にかすれている部分があった。
 その一文は───、

「この歩道橋は安全のためにつくられました」

 ───と、書いてあるのだが、「安全」の文字だけ、部首の一部(冠)がきれいにかすれていた。  そのため、一文はこう読めた───。

「この歩道橋は女王のためにつくられました」

 ───と・・・。

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 ある事に気づいたとき、ドキッ、とさせられるお話ではないでしょうか。

 街中の歩道橋には、そうそう立て札はついていないと思いますが、一見、歴史があるように見えないものに、碑文や解説の立て札がついていたら・・・。
 もしかすると、そこに不思議なものを見ることがあるかもしれません。

 では、これにて五十四の語り「女王のためにつくられました」了。


五十五の語りに続く

2010/10/05 初版




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百物語 五十五の語り
鈴鳴零言

 さて、これは必然なのか、偶然なのか・・・。そんなお話です。

 ◆ ◇ ◆

 あるところに、不治の病を患っている少年がいた。

 その少年は、余命、数ヶ月と判断されたとき、ある願いを口にした。
 マラソン大会に出たい───と。
 本来なら、体の状態的に許可されないものだったが、両親の願いを聞いてやりたいという希望もあり、実現することとなった。

 少年は大会に出るため、リハビリで体力をつけていった。

 そしてマラソン大会の日───。
 少年は慣れない運動に疲労し、ときどき大きく休みつつも、少しずつゴールに近づいていく。
 少年は苦しくても、生涯で一回だけのマラソンに───ただ運動できることが嬉しかった。

 ついにゴールが見えてきた。
 かなり前から、すでに少年以外に走っている者はいない。
 だが、それでも沿道にはゴールのかなり手前から、たくさんの人が並んでいた。
 少年の事情を知った人達が、少年がやってくるのを待っていたのだ。その中には大会に出場した人達も混じっていた。

 少年の姿に歓声が沸いた───。

 少年は歓声と激励と拍手に後押しされ、普通の人が歩くよりも遅い進みであったが、最後までマラソン大会を乗り切った。

 一週間後───。
 少年は静かに息を引き取った。
 最後は満足そうな笑顔だったという・・・。

 後日───。
 マラソン大会の写真を受け持っていた写真屋に、少年の両親が写真を受け取りに行った。
 その場で、少年が走っている写真をパラパラと確認し───ふと、あることに気づいた。
 少年が最後のランナーであり、また話題だったこともあって、ゴールする瞬間は連続で撮られていたのだが───丁度、ゴールテープを切る瞬間のものが一枚抜けているような感じだった。
 たまたま、と言えばそうなのだろうが、両親は気になって訊ねてみた。
 店員は、それだけうまく写っていなかった───など、曖昧な答えを返してきた。どこか歯切れが悪い。
 写りが悪くても、少年の最後の写真だから───という言葉に、最終的に店員が折れた。
 店員は、その写真を持ってくると、偶然なんでしょうが───と、両親に写真を渡した。
 写真を見て両親は絶句した。

 その写真、少年がゴールテープを切った瞬間を撮っていた。それは問題ない。
 しかし───。
 沿道の人々が揃って目を瞑り、手を合わせていたのである・・・。

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 偶然、まばたきと拍手が揃った───そんな一瞬が撮れてしまったのは、本当に偶然だったのでしょうか?
 もしかすると、少年の寿命という必然が、カメラに写ってしまったのかもしれません。

 では、これにて五十五の語り「手を合わせる人々」了。


五十六の語りに続く

2010/10/06 初版




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百物語 五十六の語り
鈴鳴零言

 さて、あるとき「何か」が撮れました。でも、それだけでは終わらない───。そんなお話。

 ◆ ◇ ◆

 ある大学のサークルの一つ、映画研究会───映研が自主映画の撮影を行なっていた。

 時間は夜。
 場所は廃線となった貨物列車車庫の跡地。
 車庫側には幾つにも分かれた錆びた線路が伸び、本線へと向かう先にはトンネルもあるという───ある種のシーン撮影には素敵な場所である。

 やがて、その日の撮影も無事に終わり、彼らは撤収する。

 後日───。
 編集作業をしているときに、それは見つかった。
 先日の車庫跡の映像を確認していると、あるシーンに撮影したときにはいなかったはずの人物が映っている。

 トンネル入り口を背景にしたシーン。
 同じ映研の男女が二人、役者として演技している、その奥。
 よりトンネルに近い位置に、白いワンピースを着た女性───背格好からすると、おそらく年齢は自分達と同じくらいか少し下───が、こちらに背を向けて立っている。

 編集をしていた一人が、近くにいた一人を呼び寄せる。
 あのとき、他にいなかったよな?───と。
 他の仲間も集まってきて、誰かいたら気づくはず───という結論だった。

 結局、このシーンは撮り直しとなり、そして───お蔵入りとなった映像は、大学内で話題の噂になっていた。
 映像を見たいというものが続出したため、最初に数回、上映会を開いてみたりしたが、長い映像でもないので、すぐに貸し出すようになった。

 ビデオを貸し出してから、一ヶ月くらいが経った頃のこと───。
 相変わらず映像の話題は続いていた。マスターの一本だけのため、ビデオを初めて見た人が、まだいるからだろう。
 映研の一人の近くで、その話題をしているのが聞こえた。

「───噂のアレ、やっと見れたよ。何がどうってわけじゃないけど、なんか怖いよね。特にあの横顔───」

 あれ・・・? 違う話だったか───そのときはそう思った。
 しかし、それは確かに例のビデオの話だった。
 いつの頃からか───背を向けて立っていた女性が、首を横を向けている───そんな話になっていた。
 他の映研の仲間も、その噂を聞き、どうやら本当だということがわかった。
 そこで、一度ビデオを回収して確認してみよう、ということになった。

 回収したビデオを前に、映研の仲間が集まる。
 「そんなバカな」「まさか本当に・・・?」と緊張しつつ、例のシーンを再生した───。

 役者の奥、トンネルの近くに白いワンピースの女性が背を向けて立っている、そこまでは同じだった。
 しかし───。
 女性の横顔が見えるようになっていた。こちらに振り向こうとしている───そんな感じだ。
 初めに見たときは、確かに体も頭も、完全にこちらに背を向けていた。
 だが今は・・・。
 もし、彼女が完全に振り向いたらどうなるのだろう? そんな恐怖と戦慄が皆を襲った。

 ───これを機に、このビデオは封印されたという・・・。

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 見るたびに、気づかない範囲で映像が変化していた───そんなお話です。
 今ではCG処理などで色々できますが、アナログ全盛の時代ではそういうわけにはいきません。
 デジタル機器でも撮れてしまうことはあるわけですが、当時よりも盛り上がりが悪いのは、そういった理由もあるでしょう。

 心霊写真や心霊映像にまつわるお話には、幾つかの種類があります。

 一つは「たまたま撮れた」というもの───。
 「二十一の語り」のように「直後に起きた事故の原因」と思われるもの───。
 写真に赤い光が写り込んでいるなど、撮れてから「身の回りに何らかの霊障が起こるようになった」というもの───。
 そして、今回の語りのように「写真や映像自体に変化がある」というもの───。

 概ねこんなところでしょうか。
 写真に変化があった、という話には「同時期に撮った写真の一枚だけが、異様に劣化し、セピア色になってしまった」なんてのも含まれるでしょう。

 あなたの撮った写真やビデオ、久しぶりに見てみたら「何か」が起きていた───そんなことはないでしょうか。

 では、これにて五十六の語り「少しずつ振り向いている・・・」了。


五十七の語りに続く

2010/10/08 初版




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百物語 五十七の語り
鈴鳴零言

 さて、今回はある妖怪のお話です。

 ◆ ◇ ◆

 半人半獣の妖怪の中に「件(くだん)」というものがいる。
 その姿は「件」の漢字の通り、牛の体に人の顔(頭)をしており、人語を話すと言う。

 この「件」という妖怪、生まれて数日で死んでしまうが、その生きている間に───豊作に凶作、旱魃に水害、流行り病に戦争───といったような、さまざまな予言をするという。
 そして、この予言は外れることはないと言われている。

 幾つかの説によると───、

「予言をしたら、すぐに死ぬ」
「凶事の前に生まれ、予言をして、凶事が終わると死ぬ」

 ───というもの。
 また、「件」には雌雄があり───、

「雄の件が予言をし、雌の件がその回避方法を教える」

 ───といったものもある。

 いずれの場合も、「件」の予言は外れることはない、というのが共通した伝聞である。
 さまざまな事件が起きている昨今、もしかするとどこかで「件」が予言したものがあるのかも知れない・・・。

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 「件」は───江戸時代後期から、昭和の二次大戦中───と、割と最近まで目撃談があります。
 天保7年には瓦版に載っていて、当時の瓦版が資料として残されていたりもします。
 予言をするかどうかはともかくとして、今で言うと遺伝子異常の生物がいたのは確かのようです。

 この「件」という妖怪、慣用句としても使われていて、証文の末尾に「件の如し」と使われるのは、この「件」と言われています。
 意味的には、「件」は間違ったことを言わない───つまり、嘘偽りが無い、という意味だそうです。

 ところで、この「件の如し」という言葉は「枕草子」にも載っているらしく、執筆されたとされる平安時代中期にはすでに何らかの形で「件」が伝えられていたと推測できます。
 妖怪としての目撃談は江戸時代からですが、それ以前も「件」は妖怪として伝えられていたのか───それとも別の何かが、いつしか妖怪として語り伝えられるようになったのか───興味深いところです。

 では、これにて五十七の語り「件(くだん)」了。


五十八の語りに続く

2010/10/10 初版




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百物語 五十八の語り
鈴鳴零言

 さて、映像に撮られた怪異、それはホームビデオだけではなく、映画の世界でも見られます。

 ◆ ◇ ◆

『サイコ』
 映画のラストで、犯人がカメラ方向に顔を上げる場面。
 顔に骸骨が重なって映る。

 ◇ ◇ ◇

『サスペリア』
 タクシーの場面。
 振り向いた運転手の首筋付近に男の顔が現れる。

 ◇ ◇ ◇

『サスペリア2』
 窓から助けを呼ぶ場面。
 背後から誰かに殺される時に、顔が映っている。

 ◇ ◇ ◇

『八つ墓村』
 空港内の事務所に戻った萩原健一が席に座る場面。
 窓の外に、青白い手のようなものが横切る。

 ◇ ◇ ◇

『感染』
 映画が始まってすぐ、新人看護士が注射が出来なくて困っている場面。
 新人看護士の首の後ろに、人の目のようなものが映っている。

 ◇ ◇ ◇

『死国』
 映画のクライマックス、夏川結衣と筒井道隆が会話する場面。
 遠くに薄く、物凄い形相の男の顔が映っている。

 ◇ ◇ ◇

『弟切草』
 DVD版に収録のメイキングシーン。
 数ヶ所に不可解なものが映っている。

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 数ある噂の中で、信憑性の高そうなものを集めてみました。
 人物名は俳優名で表記しています。

 映画に怪異が映っている場合───、

「本当に不可解なものが映っている」
「公表していないが、実は演出(後に演出だったことを発表することもある)」
「単なるミスで、スタッフなどが映りこんでしまった」
「本当に不可解なものが映っているが、“演出”として公表している」

 ───以上の4つに分けられるでしょう。
 演出であっても公表されず、曖昧なままの姿勢を取られると、真偽の程は謎のままです。
 しかし、真偽の程はどちらでもよく、それに気づいたら───“あれ”怪しいよね───と楽しむのが一番良いのでしょう。
 映画なんですから───。

 尚、今回の語りで紹介している『サイコ』と『サスペリア』は、演出だったと公表されています。
 しかし、それは本当に演出だったのか・・・?───そんな楽しみ方もあるのではないでしょうか。

 では、これにて五十八の語り「映画で見られる怪異1」了。


五十九の語りに続く

2010/10/14 初版




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百物語 五十九の語り
鈴鳴零言

 さて、前回に引き続き、映画の世界で見られるものです。

 ◆ ◇ ◆

『007 −消されたライセンス−』
 爆風からジェームズ・ボンドが逃げる場面。
 ボンドを追いかけるように、爆風が腕や手のような形になる。

 ◇ ◇ ◇

『陰陽師 −妖魔討伐姫−』
 樹海近くの廃墟の場面(映画開始55分弱あたり)。
 役者の背後、壁の隙間に人影がある。

 ◇ ◇ ◇

『ゴッドファーザー』
 墓地の場面。
 アル・パチーノの右肩に女の顔が現れ、しばらく映っている。

 ◇ ◇ ◇

『ダイ・ハード』
 黒人の警官が店で買ったドーナツを車に入れて、ビルを見る場面。
 カメラが横に移動する時に車があり、その横に白い服を着た人が立っているように見える。

 ◇ ◇ ◇

『羊たちの沈黙』
 クラリスが懐中電灯を照らしながらシーツで覆われた車に近づき、シーツをめくる場面。
 車の窓に骸骨のようなものが映る。

 ◇ ◇ ◇

『輪廻』
 主人公の優香が自殺をした直後、場面が変わる直前。
 爪先の向こう側の部屋から顔のようなものが一瞬だけ映る。

 ◇ ◇ ◇

『黒い家』
 映画のクライマックス、ビル内で主人公が女から逃げ回る場面。
 エレベーターのボタンを連打する前、エレベーターの向かいのドアのガラス部分に、顔のようなものが映る。

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 ホラー物の作品では“何か”が映っているのが当たり前のようなところもありますが、至って普通のアクション物にも不可解なモノは映っていることがあります。

 『007』は分かりやすいと思います。爆風の形としてありえないでしょう。
 演出だとしても意味がわかりません。

 『陰陽師』は確か、TVの「不可思議な映像特集」で検証をしていたと思います。
 問題の位置は、崖とはいかないまでも斜面になっており、ちょっと人が立てるような場所ではなかったとか。

 『ゴッドファーザー』や『ダイ・ハード』のは、たまたま怪しく見えてしまっただけなのか、それとも・・・?

 『ハリー・ポッター』にも鏡にスタッフが映ってしまったと言われる場面があるようですが、前回の語りで挙げたように───、

「単なるミスで、スタッフなどが映りこんでしまった」

 ───とは、思えない場面が混じっていたりするのは何故なのでしょうか。
 好きな映画をすみずみまで確認したとき、そこに不可解なものがある───そんなことが割と日常的な世界なのかもしれません。

 では、これにて五十九の語り「映画で見られる怪異2」了。


六十の語りに続く

2010/10/16 初版




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百物語 六十の語り
鈴鳴零言

 さて、ひとまず今回で映画シリーズは一区切りになります。

 ◆ ◇ ◆

『ポルターガイスト』
 母親がTVを触る場面。
 TVを触る前から、何かぼそぼそと喋っているような音があり、日本語発音だと「ありがとう」と聞こえる部分がある。

 ◇ ◇ ◇

『フェノミナ』
 主人公が夢遊病で彷徨い、殺人現場を見る場面。
 ガラスに女性の顔のようなものが映る。

 ◇ ◇ ◇

『呪怨2 劇場版』
 女子高生が天に召される場面の直後、暗い場面になった時(映画開始1時間20分弱あたり)。
 左下のほうに小さな顔が映っている。

 ◇ ◇ ◇

『着信アリ』
 柴咲コウが廃病院のブレーカーを戻す場面。
 明かりが点いた数秒後、後ろの鏡に人の腕のようなものが見える。

 ◇ ◇ ◇

『リング』
 松嶋菜々子が自宅の窓ガラスを閉めた場面。
 窓ガラスにサングラスをかけた女性の顔のようなものが映る。

 ◇ ◇ ◇

『リング2』
 中谷美紀が洞窟へ入っていく場面。
 「りかこ」と呼ぶ声が聞こえる。

 ◇ ◇ ◇

『リング0 〜バースデイ〜』
 主人公が劇団の控え室で鏡を見ている場面。
 左下に手が映っている。

 衣装係の女性が、徹夜で衣装を直している場面。
 天井から吊るしてある衣装の間に手が見える。

 劇の舞台上で怪現象が起こる場面。
 貞子の後ろに女性が立っている。

 ◆ ◇ ◆

 ・・・という、お話。

 ラストは有名タイトルを多く持ってきてみました。

 『ポルターガイスト』は日本語的には“何々”と聞こえる、といったものです。
 実際に何か喋っているとしたら英語なんだと思いますが───この類で実際に聞き取れたらラテン語だったとか、今は使われていない言語だった───などということもあるかもしれません。

 『リング』は最近の映画での、不可思議な場面の有名どころと言えるでしょう。
 人気となった近年のホラー物なので、それだけに知られていると思います。

 『リング2』は、後に遺体が発見された洞窟です。
 メディアの報道に挙がっていたので知っている方も多いと思います。
 撮影時期などを含めて色々取り沙汰されましたが、声との関係は果たして・・・?

 『リング0』の「貞子の後ろの女性」は演出的にまずありえないでしょう。
 注目させるべきは「貞子」なわけですから。

 全体的におとなしい感じのある不可思議な映像ですが、“何か”が映っている───それ自体がどれほどの確率なのか・・・。
 特にホラー物に限定すると異常と言っていいかもしれません。
 派手な怪異に人気(?)がありますが、地味な怪異こそ、隣り合わせの“何か”があることを教えている───そんな風に考えられないでしょうか。

 では、これにて六十の語り「映画で見られる怪異3」了。


六十一の語りに続く

2010/10/18 初版

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