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トキめいてるじゃん! 〜冬の特別編〜 (5)
山崎かおり

 放課後、ついに作戦は実行に移された。
 部室で行われたミーティングで、明日、予定していた部活の練習が中止になったことが伝えられたのだ。
 冬休みの第1日目に部活がないなんて、珍しいことらしいが、藤倉副部長以外には、すでに全員に伝えられていることだったので、誰からも異論はなく、部活の中止はスムーズに決定された。
 その後、藤倉副部長は今日中に伝票の整理をすると言い出したので、何とかその場で明日の予定を取り付けようと努力はしてみたものの、僕のソワソワとした態度がいけなかったのか、それとも警戒されているのか、肝心なことは何も話せないうちに別れることになってしまった。

「バレたら部室掃除1ヶ月、バラしたら掃除卒業まで、か。彼女を誘うこと自体を失敗したら・・・」

 考えないことにした。

 学校からの下り坂は右に大きくカーブしており、左手には武蔵ヶ丘の街並みがよく見える。
 とても美しい光景だ。
 深い溜息を連続でしていた僕だが、いつも、ここからの景色を見ると元気づけられるような気がする。
 今はためらってる時じゃないぞ。
 城沢部長から渡された、藤倉副部長の住所の書かれたメモを握りしめて、僕は武蔵ヶ丘商店街へと向かったのだった。




 僕が藤倉さんの家を見つけたのは、夜もすっかり更けてしまった10時半過ぎのことだった。
 城沢部長に手渡されたメモには、そこに書かれているはずの藤倉家の住所はなく、「帰りに大根1本と牛乳2パック。鳥のムネ肉 500gお願いネ」と書かれていた。
 たぶん、城沢部長宛のメッセージだろう。
 すさまじい昼行灯ぶりに頭にくる気も起きなかった。
 結局、商店街周辺の民家をしらみつぶしに探したあげく、何軒かの「藤倉」という表札を掲げている家を見つけることができた。
 もはや、即席の探偵である。
 これまでの彼女に関する情報から、様々なファクターを考慮に入れて、「たぶん、ここに間違いはないだろう」と確信できたのが、この時間である。

「・・・なんだか、やってることがストーカーっぽいよなぁ」

 思わず、独り言をこぼした。
 吐く息もすっかり白くなる寒空の下、僕は家の前をウロウロしていた。
 時間も時間だ、おいそれとチャイムを押すわけにもいかないし、かと言って忍び込んだら、ただの犯罪者である。
 ここに来て、電話するという手もあったことを思い出したが、小銭すら持っていない。
 家に帰ってから電話しようにも、もっと遅い時間になってしまう。
 何十回という葛藤の中で、ようやく決心して(やはりチャイムを鳴らすのが一番問題がないのだ)、チャイムに手を伸ばした。
 その時、ドアノブが回転するのに気が付いた僕は、思わず玄関脇の植え込みの中に飛び込んでしまった。

 ──────人の気配に気が付いたとはいえ、これじゃ本職の泥棒だよ・・・。

「それじゃあ、ちょっと店に戻るな」

 という太い男性の声がした。
 藤倉さんのお父さんだろうか。

「がんばって来てね」

 と今度は、たしかに藤倉さんの声がした。
 とっさに、僕は声のした方に向かって顔を覗かせた。
 失敗だった。
 藤倉さんのお父さんと、すぐ間近で顔を合わせてしまったのだ。

「何をしてるんだ、君は・・・」

 時間が止まったような錯覚におちいり、2人の間を冷たい風が吹き抜けていった。


(6)に続く

2011/02/01 初版

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