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僕の彼女は戦国マニア (17)
P・鴨川 feat.ライターC

 不気味な静寂が部屋を包みます。
 山田さんは応急手当をしようとしても断るし、むぎむぎは何か熱心に調べていて話しかけられる雰囲気ではありません。

「この地下室から、外に抜ける通路があるわね」
「なぜそれを…」

 ふと思い付いたように山田さんを振り返ったむぎむぎが、妙な事を言い出しました。
 山田さんの返事で、それが的外れではない事が分かります。

「明治時代の洋館にはよくある造りよ。高貴な方のお屋敷ならばね」
「…こっちだ」

 戸棚の裏に人が一人やっと通れるくらいの通路がありました。
 手彫りかもしれません。
 ごつごつした岩肌がモロに見えています。

 ドンドンッ!!

 地下室のドアを傀儡兵達が叩く音がしました。
 もう来たんだ!

「けっこう早いわね…」

 むぎむぎは薬品類の入っている戸棚に向き直って、焦った顔をしています。

「むぎむぎ逃げよう! さっきから何を…」
「水酸化ナトリウムにメタノール…これも、これもある。加熱容器もあるから、あとは脂肪酸があればトリグリセリドが…」

 僕にはまったく分からない事をぶつぶつ言っています。
 たぶん、何かを調合しようとしているんでしょう。
 おそらくは燃やし尽くす類のものを。

「そんな事やってるヒマないだろ!」

 僕は石油ストーブ用の灯油をドアの前に撒きました。

「だ、だめだ!」
「ゾンビだけ燃えればいいのよ!」

 ズバン!!

 ついにドアを破った傀儡兵が2体、部屋の入り口に姿を現しました。

「早く通路へ! 強盗も忘れずに!」

 僕が叫ぶと、傀儡兵がこちらを見ました。
 知覚に頼っている以上は、頭を攻撃されたら動けなくなると思うのですが…。

「やめてくれ! やめてくれっ!」

 むぎむぎに首根っこを引っ張られている山田さんの声が気になりましたが、テーブルの上にあったランプを、さっき灯油を撒いたあたりに叩き付けました。

 ボウン! と音がして、着火…というよりも爆発を起こします。
 灯油が飛び散って、戸棚のあちこちに火が広がります。

 僕も急いで通路に飛び込みましたが、あちこち煤だらけになりました。
 どこかヤケドをしているかも。

 業火の中で、傀儡兵2体が燃えながら暴れ回っています。

「逃げましょう…」

 むぎむぎは強盗を引きずって、通路の奥へ進み始めました。
 これで、皆で地下の抜け道から脱出できます。
 傀儡兵は崩れ落ち、みるみる燃え上がる洋館。

 唖然となって、その光景を眺めていた山田さんが、突然、館の方へ戻ろうとしました。
 慌てて、手を掴むも振りほどこうとします。

「山田さん、危ないから逃げましょう!」
「娘が、娘がっ!」
「あれだけ頑丈な冷凍庫なら大丈夫ですよっ!」
「だめだ! 娘が!」
「聞けって!! 生きている4人で出るんです! 死んだらなんにもならない!」

 止めるのを聞かず、僕の手を振り払って、燃え上がる洋館に走り出す山田さん。

「山田さんっ!」


(18)に続く

2014/03/11 初版

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