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モンスターハンター3RD・SS 〜笑顔の靴下〜 (11)
大和武尊

「何でネコちゃんはアイルーって呼ばれてるの、お供なのに? 私が人間って呼ばれるようなものよ?」
「・・・」

 アイルーは少し悲しそうな顔をした。

 広場になっている空き地の中央には、ギルドの大型荷車が到着し、ドスファンゴを積み上げているところだった。
 ディックスはタバコを吸いながら、生真面目そうなギルドの係官と話をしている。

 自分は通りかかっただけで、4人パーティーがドスファンゴを捕獲した。
 2人は戦闘中の負傷で、すでにネコタクに運ばれている。
 1人は応急処置をしてあるが、意識が戻っていないので、荷車に乗せてほしい。
 それと、同乗者は女性射手1人。
 加えて手荷物が少々と、ベースキャンプを撤収したら、そこでの装備、備品も一式、乗せてほしい。

 係官は羽ペンでメモをしており、ディックスは要点と要請を適確に伝えているところだった。

 ふいにアイルーがつぶやく。

「お供じゃニャいから・・・」

 アイルーは広場の作業を見たままつぶやいた。
 積み込み作業が終わったら、当然、エミリアと別れる事になる。
 同時にディックスともお別れなのだ。
 また“ソロ”として暮らす生活が待っている。

 野生アイルーの集落で暮らす事に不満はなかった。
 だが、あまりにもざっくばらんに、そして当然のように仲間として扱ってもらえた事、一仕事を終えた後の連帯感が心地よくて、アイルーは寂しくなっていた。

「お供アイルーじゃないの? あんなにサポートが上手なのに?」
「ニャ・・・」

 エミリアは驚いていた。
 相当、長い間コンビを組んでいても、あそこまで息の合った連携はなかなか発揮できるものではない。
 実際、アイルーの放った樽爆弾が、ハンターを直撃するなど日常茶飯事なのだ。

 猫背のままで立ち上がり、目に焼き付けておこうとするかのように、じっとディックスや荷車を見ている姿は、寂しさで押しつぶされそうになっているようにも見えた。
 別れが迫っているのだと、傍目にも理解できた。

 ───お供になればいいじゃない。

 そんな事を軽々しく口には出来なかった。
 アイルーには事情がありそうだし、あの男もただの軍人で、ハンターではないのかもしれない。

 狩人はアイルーを連れて歩くのがほとんどだ。
 だが、仲介料を払えない、単独行動が向いている、毛アレルギーなどの理由からお供を雇わないハンターも少なからずいる。

 エミリアにしても、ギルドからユクモ村に派遣されて来たばかりで、パーティー行動をメインにする為、まだお供アイルーを連れてはいなかった。

 そもそも、お供アイルーはギルド公認のハンターにしか随行を許されていない。
 それに、正式なお供アイルーになるには、やはりギルドの公認を得るか、同種族またはハンターが保証人にならないと登録ができないシステムになっていた。
 どれか、または全てが、この小さな猫人族と男の間に大きな壁を作っているのだろう。

 アイルーはひたすら作業を見守っていた。

 名乗る時間すらなかった。
 剣を触っていた。
 自分の毛並みはメラルーに似ているのに、ぜんぜん疑われなかった。
 2人で目玉焼きを食べた。
 荷車でハンターが運ばれていって、最初は逃げる予定だった。
 2人目が運ばれていったら、ダンニャサンが支援に行くと言い出した。
 戦闘に誘ってくれた。
 何より“助けてくれ”と言われたから、がんばろうと思った。
 一人前のアイルーとして扱われたのが一番、嬉しかった。
 そして、戦闘突入。
 こわくなかったけど、イノシシの顔にはびっくりした。
 自分はいつもひとりぼっちだからソロってあだ名で呼ばれている。
 本当の名前は分からない。
 ダンニャサンにはあだ名で呼ばれたくなかった。
 名乗りたくても名乗れないから、男の名前を聞くことが出来なかった。

 じっと作業を見つめながら、話し続けた。
 矢継ぎ早に、相づちを打つ間も与えず、ただただ話していた。
 ロクに口も回らないのに。

 隣に座っている綺麗な人間族に、何かを話していないと、きっと泣き出してしまうと思って、そうしたら涙が出るから、この光景が歪んでしまうと思って、そうしたら思い出もぼんやりしてしまうと思って、ずっと話していた。


(12)に続く

2013/07/16 初版

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